もっぱら消費者物価の上昇を狙う政策は誤り 物価指標ならGDPデフレータに注目すべき

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GDPの輸出と輸入のデフレータを見ると、2015年に入ってから輸入デフレータが大きく下落して、輸出デフレータの動きと大きく乖離している。GDPデフレータと民間最終消費デフレータの前年同期比上昇率の乖離をみると、輸出デフレータと輸入デフレータの上昇率の乖離と同じ動きをしているのが確認できる。

2012年末に第2次安倍政権が生まれてから円安が大幅に進んだ。2013年の前半は輸出、輸入デフレータは、ともに大きく上昇しているが、ほぼ同じ程度だった。2013年後半からは、輸入デフレータの上昇率が輸出デフレータよりも高くなった。そして2014年末以降は輸入物価が大きく落ち込み、輸出と輸入のデフレータの動きは2013年秋ごろとは逆方向に大きく乖離した。

原油価格の下落は悪いことなのか?

消費者物価の上昇率は次第に低下してほとんどゼロになってしまい、日銀は、消費者物価の「生鮮食品・エネルギーを除く総合指数」などを消費者物価の基調的な動きを示す指標として示し、物価上昇の基調が変わっていないことの説明に追われている。しかしGDPデフレータで見ると、むしろデフレ脱却に近づいているように見える。

いうまでもなく、このような乖離が生じているのは、原油価格の動きに原因がある。

リーマンショック後に、指標となるWTI(期近物先物)で1バレル30ドル台にまで下落していた原油は、先進諸国の大胆な金融緩和と中国など新興国の高成長を背景とした需要の拡大予想で、1バレル100ドル程度で推移していた。しかし、アメリカがQE3(量的緩和政策の第3弾)を終了して金利引き上げに向かい、中国経済の減速が目立つようになると、1バレル30ドル台に下落している。

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