米国の社長と平社員「給与格差300倍」の実態 上場企業の経営陣と平社員の給与開示へ
ゼネラル・エレクトリック(GE)の最高経営責任者(CEO)の昨年の報酬は総額3730万ドル(約46億5000万円)。どんな基準で考えても、かなりの高額だ。
では、GEが昨年、数十億ドルを稼ぐために尽力した30万5000人の従業員の平均的な給与と比べた場合、どのくらい大きな額と言えるのか。GEも含めてアメリカの企業で、経営陣の報酬が平社員に対してどこまで膨れ上がっているのか、その比率を明らかにしているところはほとんどない。
だが、状況は変わりそうだ。
米証券取引委員会(SEC)は8月5日、大半の上場企業に対し、CEOの報酬と一般従業員の平均的な給与との比率の開示を義務づける規則を承認した(委員5人のうち、共和党の委員2人が反対した)。2017年から実施される。
10年に制定された金融規制改革法(ドッド・フランク法)に盛り込まれていた規制だが、企業側の反発が強く、議論が長引いて承認が遅れていた。経済界は当初から、誤解を招く規制だと非難。実施にはコストがかかり、企業を委縮させてエグゼクティブの報酬を抑制させる狙いだと反論している。
高額報酬が妥当かどうか
経営陣と一般従業員の給与比率が毎年、財務諸表で公表されることになれば、収入格差をめぐる議論をさらにかきたて、格差の根拠としても強調されるだろう。収入がもっとも多い層は収入が増えるペースももっとも早く、格差論争は近年ますます激しくなっている。
シンクタンクの経済政策研究所によると、経営陣と一般従業員の報酬の比率は、50年前の約20倍から2013年は300倍近くまで広がっている。
「アメリカの中流層は何年も給料が上がらないままだが、CEOの報酬はうなぎのぼりだ」と、金融規制改革法に今回の開示義務の規定を盛り込むように働きかけたロバード・メンデス上院議員(民主党)は言う。「この単純な基準によって投資家は、企業が一般の従業員にどのような待遇をしているかや、経営陣の報酬が妥当かどうかを監視できる」
ただし、いかなる意味でも経営陣の報酬額を制限するような規制ではない。上場企業は、すでに毎年公表している経営陣の報酬について、今後は一般従業員に支払う給与の中央値との比率を開示する。