賃上げムードや業績回復の流れを受けて、従業員の月給を引き上げたり、業績連動分のボーナスを上積みしたりする企業は少なくない。一方で、世間一般的に景気が良くても需要の減退、競争激化、外部環境の変化などによって業績が悪くなり、給与の引き下げが避けられない企業もある。
そうした動きを短期的、また散発的に見ていても全体的な傾向はイマイチわからない。東洋経済オンラインは主要な上場企業が過去10年にわたってどれだけ従業員の平均年収を増減させたかを調査。第1弾として「平均年収が増えた!トップ500社ランキング」(7月28日配信)をお届けしたが、今度は平均年収が減った企業のランキングを紹介する。
約3600社の上場企業すべてを網羅している『会社四季報』(2015年夏号発売中)で集計しているデータを活用。過去10年で平均年収が減った約1000社をすべてランキングにした。
10年以上前から上場し、平均賃金を継続して公表している約2600社を集計の対象にした。ただ、単体の従業員数が30人に満たない小規模な企業や、本社の中枢を担う社員しかいないケースが多く、給与水準が製造現場などの実態とも離れやすい純粋持ち株会社などは除いている。
1位有沢製作所は419万円減!
グループ企業については、全体で連結ベースの年収を算出するのがベストだが、基データが原則として単体会社となっているため、単体の数字であることをあらかじめお断りしておきたい。本ランキングには、過去10年での平均年収減少額のほか、同減少率(%)、直近の平均年収、平均年齢、平均年齢の増減も加えている。
ここ10年での平均年収減少額が419万円(直近年収は486万円)ともっとも大きかった上場企業は、有沢製作所。新潟県上越市に本社を置き、プリント基板向けの電子材料を主力としている。電気絶縁材や産業用構造材を拡大中のメーカーだ。直近の業績は2015年3月期が売上高375億円、営業利益29億円という規模である。
有沢製作所はリーマンショック後の2009年3月期に売上高が一気に3割近く落ち込む難局に遭遇。その後の3年で計77億円に上る最終損失を計上し、営業赤字は2009年3月期~2013年3月期までの5年にわたって続いた。このときの業績悪化が従業員の給与減に影響したとみられる。
平均年収が大きく減っている企業は、やはり本業での苦戦のほか、突発的な出来事による巨額損失に見舞われ、業績が悪化しているケースが多い。
今回の集計対象約2600社のうち、約1000社で平均年収が減少したということは、ここ10年で全体の4割前後の企業では実質的に給料が上がらず、むしろ下がっている傾向があるということだ。物価上昇や消費税の引き上げなどに伴い、生活が苦しくなっている世帯が増加しているのもうなずける。上場企業ですらこうなのだから、中堅中小企業の状況はもっと厳しいのかもしれない。