7月も今週で終わり。この6~7月に多くの企業や役所では夏のボーナス(賞与、一時金)が支給された。年収の約半分となる前半の稼ぎを、ざっと2倍に計算して今年の年収を見積もっているビジネスパーソンもいるかもしれない。
賃上げムードや業績回復の流れを受け、従業員の月給を引き上げたり、業績連動分のボーナスを上積みしたりする企業は少なくない。ただ、こうした動きを短期的、また散発的に見ていても全体的な傾向はイマイチわからない。
そこで東洋経済オンラインは、主要な上場企業が過去10年にわたってどれだけ従業員の平均年収を増減させたかを調査。第1弾として「平均年収増加額」の多さに着目して、上位500社をランキングにした。約3600社の上場企業すべてを網羅している『会社四季報』(2015年夏号発売中)で集計しているデータを活用した。
平均年収増加額は10年以上前から上場し、平均賃金を継続して公表している企業を集計の対象にした。ただ、単体の従業員数が30人に満たない小規模な企業や、本社の中枢を担う社員しかいないケースが多く、給与水準が製造現場などの実態とも離れやすい純粋持ち株会社などは除いている。
グループ企業については、全体で連結ベースの年収を算出するのがベストだが、基データが原則として単体会社となっているため、単体の数字であることをあらかじめお断りしておきたい。本ランキングには過去10年での平均年収増加額のほか、同増加率(%)、直近の平均年収、平均年齢、平均年齢増減も加えている。
1位ヒューリックは10年で600万円増!
1位はヒューリック。直近の平均年収は1268万円で、この10年間での増加額は600万円にも上る。ヒューリックは、1956年に日本橋興業の名で、旧富士銀行(現みずほ銀行)が入居するビルの所有から出発した会社だが、2012年7月、生糸メーカーから不動産事業に転じた昭栄(1931年設立)が形式上旧ヒューリックを吸収合併し現社名となった。
ヒューリックは東京23区の駅近接ビル中心に好物件を所有しており、賃貸可能面積では総合不動産に次ぐ規模になっている。年収の増加はここ数年における業績拡大を背景にしたものとみられる。合併前は昭栄、旧ヒューリックとも同700万円台だった。
2位は三井松島産業。柱は豪州生産、輸入販売などの石炭事業で、豪州以外の権益も拡大しているが、かつて戦後の石炭産業衰退で炭鉱事業を縮小。2001年には池島炭鉱を閉山し、2000年代前半は無配が続くなど、苦境の時期があった。
一方、池島炭鉱閉山と同時に、海外石炭の輸入に転換したことが奏功し、その後は業績を回復。2007年3月期に復配し、その後も安定した配当を続けている。従業員への給与も一時期は切り下げたとみられるが、苦境を脱し、安定した収益基盤を得てきたことから徐々に給与水準を引き上げているとみられる。
4~5位にはファナック、キーエンスといった高給企業がランクイン。両社ともに健全な財務体質を持ち、競争力の高い事業基盤を築いていることで知られている。業績の成長とともに従業員の給与も高めているようだ。
平均年収増加額の上位をみると、業績を拡大させている企業や一時期は低迷しながらも復活した企業などが目立つ。成長の可能性を秘めた企業に入社すれば、現時点での給与水準とは比較にならない高給取りになることも夢ではないことがわかる。企業の先行きを見通す「目利き」は、何も投資家だけに必要なことでもないことがわかる。