奉公人が定着せずに愚痴をこぼす馬琴
「最近は奉公人がとにかく我がままになったものだ」
(近来、奉公人とかく我まゝに成行き)
曲亭馬琴は、あまりに奉公人が辞めてしまうので、そんなふうに嘆いている。
そういう自分も14歳の時には、主君の孫に小姓として仕えるも出奔しているわけだが、確かに馬琴のもとで働く奉公人は入れ替わりが激しかった。長続きした奉公人でも2週間程度で、短い者はわずか4日で辞めてしまった。いずれも、風呂や遣いに行ったまま帰ってこなかったという。
そんなふうに職場放棄されれば、馬琴が愚痴をこぼすのも無理はないように思うが、どうも馬琴のほうに問題が大きかったようだ。
奉公人を雇い入れるときは「口入屋(くちいれや)」と呼ばれる仲介業者が間に入ったが、馬琴は口入屋が連れてきた4人のうち3人を何の話し合いもせずに、引き取らせている。その理由について、二人は「身元引受人の住居が近すぎる」というもので、もう一人は「大女すぎる」というものだったというから、こだわりポイントがよくわからない。


















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