RAG FAIR・土屋礼央「声の挫折」乗り越え向き合ったもの。「ありがとう発声障害、ありがとう声帯ポリープ」と言えるようになるまで

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それから、いつだったかは覚えていないんですが、リビングルームで誰もいない時になぜか歌いたくなり鼻歌を歌ってみました。

あ、気持ち良い。

吹き抜けのリビングの環境で程よく響いて気持ち良い。今まで出なかった音程も安定して出ました。

色々考えた結果、アップライトピアノを購入し、全てをアナログで身体で響きを感じる環境に変えてみました。すると生ピアノで歌う歌が気持ち良くて……。

久々に感じたこの感覚。ミュージシャンとしてやっていけるかも。これを続けよう。勿論、全てにおいて、まだまだでしたが、未来に光が差した瞬間でした。

歌い続けないと未来はない。生ピアノ限定の弾き語りライブを3年前から始めました。こんな歌で人前で歌って良いのだろうかと中断していたライブでも、生き様として聴いてもらおう。この生き様が、誰かの勇気に変わるかも知れない。

発声障害の事をファンの人にも発表、なぜライブをやるのか、なぜ生ピアノなのか、全てを語ってまさに弾き語りライブツアーを始めました。おかげで、少しずつではありますが、歌がどんどん良くなっています。

全てを受け入れてライブに足を運んでくれて、しかも拍手もしてくれるお客さんに本当に感謝。

ライブが楽しくなってきました。音楽が楽しくなってきました。

一緒に歌ってくれる人がいると、声が出やすい事もわかってきました。RAG FAIRのみんなは僕の発声障害の事を本当に理解してくれていて僕が歌いやすい環境作りの為に、アレンジもパフォーマンスも調整をしてくれます。本当に頼もしい仲間に囲まれていたんだなと再認識。

そして2024年からはズボンドズボンの活動も再開。昔の様にゲラゲラ笑いながらカッコ良いと信じている音楽をやれています。本当に沢山の仲間に囲まれて生きているんだなと改めて思い、恩返しせねば……そういう想いを持ちながら毎日過ごしています。

また歌のパフォーマンスを元通りにしたいという考えもやめてみました。発声障害も含めて僕なんだ。今も3歩歩いて2歩下がる状態は続いていますが、きっと未来は明るい。ここから成長していこう。今がベスト。このベストのレベルを上げていこう。

今年は声帯ポリープが出来てしまい、裏声が出ない時期も続きました(ダブルショック!)。ポリープ切除の手術を決断しましたが、手術2日前にポリープが取れて、手術回避という面白い奇跡の様な出来事もありました。今は綺麗に裏声が出てとても裏声を出すのが楽しいです。

発声障害、これからもよろしくね

僕は小さい頃から歌を歌っていて、周りから見ても最初から歌が上手い人でした。自分の歌を頑張って手に入れたと言うより、最初から持っていた気がします。

今振り返ると、自分で稼いだお金で買った物と、買ってもらった物だと、思い入れが違う様に、もしかしたら、自分の歌としっかりと向き合ってこなかったんだと思います。

発声障害になった事で、自分の歌とより向き合い、自分の歌声を一音一音愛おしく思える様になりました。ポリープが出来た事で、自分の声帯の動かし方を細かく理解出来る様になりました。

辛い事には、なるべく出くわさない方が良いけど困難にぶつかった事でようやく気づける事も沢山あります。

癌を患った方が、癌と闘うのではなく「癌細胞さん、これからよろしくね」と癌細胞と共に生きていく事にしたら、お医者さんも驚くほど、元気に長生きしたという話を聞いた事があります。

発声障害になった事で、僕は沢山の事に気づけました。ありがとう発声障害、ありがとう声帯ポリープ。これからも困難に出会った時、そう思える人生を歩みたい。

捉え方を変えてみたら大抵の事が楽しくなった僕の話
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ドラゴンボール世代でもある僕は神龍(シェンロン)にお願いするなら絶対に「思い通りに歌が歌えます様に」の一択である事は間違いないけれど、神龍に叶えてもらわず、発声障害と向き合って生きてきた今の自分の価値観は本当に宝物です。

自分も周りも本当に大切にしていきたい。もっともっと自分を家族を仲間を他人を生き物を地球を愛していきたい。

歌も人生も100点満点全部正解!はいクリア!なんてものはありません。これからも色々な壁にぶつかって生きていくのでしょう。ゲームクリアのないロールプレイングゲームです。難題をクリアして次のステージでまた難題を与えられ、それをまたクリアしていく、ずっとその繰り返し。

ゲームだと楽しいのに人生だと難題を与えられると辛くなるのは勿体無い。楽しむぜ。発声障害、これからもよろしくね。

でも絶対、思い通りに歌ってやる !!この気持ちでいられる自分も大好きだ。

毎日を大切に、丁寧に。

土屋 礼央 ミュージシャン

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つちや・れお / Reo Tsutiya

1976年9月1日生まれ。東京都国分寺市出身。

RAG FAIRとして2001年メジャーデビュー。瞬く間に学生からの支持を受け、アカペラ史上最高の動員数を全国各地で記録する。NHK紅白歌合戦出場、オリコンシングル1・2位独占、ゴールデンアロー新人賞受賞するなどアカペラブームの立役者となる。

2011年よりソロプロジェクトTTREをスタート。RAG FAIR、ズボンドズボン、TTREの楽曲の多くの作詞作曲を手掛ける。

TBSラジオ『こねくと』、NACK5『カメレオンパーティー』、TBSラジオ『立飛グループpresents 東京042~多摩もりあげ宣言~』などラジオ番組でも活躍。埼玉西武ライオンズ、FC東京サポーター、F1ファンであり、鉄道好き(企業努力)でもある。

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