RAG FAIR・土屋礼央「声の挫折」乗り越え向き合ったもの。「ありがとう発声障害、ありがとう声帯ポリープ」と言えるようになるまで
「これは一旦、お医者さんに診てもらった方が良い。歌練と言う段階ではないかも」とボイトレの先生からもアドバイスをもらい、日本で権威のある著名な声の先生がいる病院を紹介していただき、診てもらう事になりました。
「土屋さんは声のイップスかも知れません」
イップス? イップスとは主に、スポーツ関連で心理的な理由で思う様に身体が動かず動作に支障が出る運動障害の事。プロ野球のピッチャーが、突然キャッチボールが出来なくなってしまう、あれだ。
正式に、声のイップスという病名はないのですが、先生の表現として、声のイップスの様な状態だと思う、との事でした。大きく言えば、発声障害。
「最近は多いですね、この症状になってしまう歌手の方」と先生はおっしゃっていました。
おそらく精神的なストレスが原因です。ただ使い過ぎも原因かも、特にラジオの生放送で喋り続けるとなりやすいとの事。
準備をして発声する歌と、反射で喋る事が求められるラジオの生放送の発声は、真逆の発声なんですって。帯で生放送のラジオをやりながら歌も歌い続けるというのは相性が悪いらしいです(苦笑)。
これは厳しい……。音楽がもちろん第一なのですが、生放送のラジオも今の僕を作ってくれた大切な分野。
生放送のラジオを僕の人生から削除する決断は相当勇気がいります。
「でもラジオもやりながらでも、リハビリしていけば、歌える様になると思いますよ!」
ちょっとホッとした自分がいました。ずっと苦しんでいたので、発声障害、声のイップスなんだと原因を把握出来ただけで、だいぶ救われました。
早く良くなりたくて「迷走」
症状がわかれば、ここから改善していけば良い。止まない雨はない。定期的に病院に通いながら、リハビリプログラムも教えてもらう事になりました。
リハビリをする事で、ちょっとずつですが回復に向かう感じもありました。ただ環境によっては、回復具合も完全にリセットされる時も沢山ありました。他の方法も試してみよう……。焦りや不安でいっぱいだった僕は、他の改善方法も模索する事になります。
精神的ストレス、加齢による筋力低下……。おそらく原因は一つではないのでしょう。一つずつ、原因を探ってみよう。色んな人に相談して、紹介してもらったオススメの改善方法を手当たり次第、試してみました。
パーソナルトレーナーをつけて、身体のコンディションを整えてみたり、骨格の調整もしてみたり。その他、色々な人に相談したり、他のボイトレも色々試したりしました。病院も通い続けました。
ただ、どれも、一瞬回復の方向に向かうのですが、これだ!というベストな方法が見つからずどんどん知識だけが増えていって頭でっかちの状態に。
気づけば色々気にし過ぎて、歌が歌ではなくなり、音楽と言えるものではなくなっていました。歌を楽しめる感覚はゼロ。気づけば歌いたいと思う感情は芽生えなくなっていました。発声障害の知識が増える事でより苦しくなっている気もします。
一旦、全てを忘れてみよう。生き物として歌いたくなるのを待ってみよう。病院通いもレッスン通いも全てストップしてみました。
歌う事が楽しくない日々が訪れるとは夢にも思いませんでした。僕は自分が一番自信を持てる要素が急に無くなりました。自分の努力の積み重ねの足りなさもあったとは思います。
でも過去を悔やんでも何も始まらない。ここから始めてみよう。
テレビ等で歌うお仕事の依頼も何度もいただきました。発声障害の事をほぼ公表していない状態だったのでお断りする時の説明が難しかったのですが、ご期待に応えられず本当に申し訳なかったです。お断りするのって、疲れますね……。
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