有名大学出身のエリート新入社員→手が付けられないほど"モンスター化"の「なぜ」。彼のやる気を削いだ上司の言葉とは?
それどころか、「あのテーマは私のアイデアです。私が参加しない以上、あのテーマでイベントを開催するのをやめてください」とまで言い出した。
さすがにこの提案は却下されたが、Tさんはその腹いせに、自分が作成した展示ブースを自ら撤去するという暴挙に出た。
「アンチ不燃人」への驚くべき変貌
Tさんは完全に「アンチ不燃人」になってしまった。
アンチ不燃人とは、単に火がつかないだけでなく、組織やリーダーに対して否定的な態度を繰り返す人材だ。過去の期待や努力が裏切られたと感じ、心を閉ざしてしまった状態にある。
「アンチ不燃人」の特徴は次の通り。
(1)組織の方針にことごとく反対する
(2)他のメンバーの士気を下げる発言を繰り返す
(3)建設的な提案をまったくしない
Tさんの否定的な態度は、チーム全体の雰囲気を悪化させた。Tさんの同期たちも「頑張っても無駄」という空気に染まりはじめた。そして1年後には同期のうち2人も離職していった。
上司は困り果てた。Tさんに注意しても「はいはい、わかりました」と聞き流すだけ。話し合いを持ちかけても「今さら何を」と拒否されるようになった。
原因は、上司が自分視点で部下たちとコミュニケーションをとったことだ。相手視点が著しく欠けていた。新刊『わかりやすさよりも大切な話し方』にも書いたとおり、相手のタイプに合わせた話し方をすべきだった。
Tさんは「アピール自燃人」だったのだ。だから上司がすべきことは「特別扱い」だった。みんなの前で、
「T君だけが頑張っている」
「みんなもT君を見習いたまえ」
と、Tさんは言ってほしかったわけではない。評価も、同期と横並びの「A評価」でも構わなかった。ただ、
「みんなの前で、ああ言ったが、本当はT君がいちばん頑張っていることは分かっている」
「秋のイベントは、T君がいなければ絶対に成功しなかっただろう」
このような一言が欲しかったのだ。それだけでよかった。そして、
「次に、何か困ったことがあったら、まず最初に君に声をかけるよ。君の発想力は凄いからね」
このような、ちょっとした特別扱いさえあれば十分だったのだ。
■まとめ
「アンチ不燃人」になってしまった人材を変えるのは、かなり難しい。長い時間がかかるだろう。だからこそ、予防が何より重要なのだ。
優秀な人材をモンスターにしてしまうのは、組織にとって大きな損失だ。Tさんのような悲劇を繰り返さないためにも、自分視点でコミュニケーションをとるのはやめよう。相手視点で話し方を変えるのだ。
一人ひとりの特性を理解し、それぞれに合った接し方をする。令和時代のリーダーに求められる資質だ。
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