オタクは国境を越える!性的描写が厳しいインドネシアでも盛り上がる現地「コミケ」のリアル
インドネシアにはポルノ規制があり、わいせつな出版物の頒布、展示は法律により禁止されている。ただ、実際には当局はほとんど摘発せず、事実上は黙認されている。
同じ東南アジアでも、隣国のマレーシアはまったく異なる。マレーシアからコミフロに参加したHaru Chan(ハルチャン)さん、BUTTERSPOON(バタースプーン)さんは「マレーシアではエロがNG。規制が厳しいのです。インドネシアは規制がゆるいので、同人誌イベントの熱量も高いです。去年からコミフロに参加していますが、毎回インドネシアの熱量に感動しています」と話した。
コミフロのSudwi Karyadi(スドウィ・カリヤディ)代表にも性的描写の規制について聞いたが、ただニコニコうなずくばかりだった。認可はされていないが、摘発もされない。グレーゾーンにコミフロの盛り上がりがあることがうかがえた。
書き手と買い手、問われる作家の集客力
この熱気あふれるイベントの参加者はどんな人々なのか。話を聞いているうちに分かったことがある。本という形で頒布できるクリエイターの多くは、プロのアーティスト/イラストレーターなのだ。
「グッズのサークルは趣味で参加するアマチュアが多いが、同人誌を出しているのはプロの作家がほとんどだ」と、出展者の一人、Raina(ライナ)さんは言う。面白いのは、そうしたプロの作家の多くは日本と縁があり、日本語が話せる人が多い点だ。
前述の男性同性愛者向け18禁同人誌を描いたMAZJOJOさんは日本語が堪能だ。東京・大久保を舞台に、日本人キャラクターが登場するオリジナルBL小説を頒布したUka(ウカ)さんは日本留学の経験がある。彼女が主宰するサークルには、他にも日本留学経験を持つメンバーが複数いるという。
インドネシア在住の日本と縁のあるプロの作家、イラストレーターが同人誌制作の中心となると、書き手は限定されるようにも思えるが、それでも100~200サークルが同人誌を頒布している。日本の影響力は何気に大きいのだ。
では、買い手はどのような人なのか。男女比は男性6、女性4といったところか。高校生やサラリーマンなど、日本のオタクと変わらない印象だ。オリジナル作品と二次創作両方の作品を頒布しているプロ作家のHarahara(ハラハラ)さんは「一番多いのは自分のウェブトゥーンや個人サイトの読者」だと語る。作家の集客力が重要なのだ。
そのためには、SNSでの宣伝は必須だ。X(旧Twitter)やInstagramが主流だが、日本の同人誌界隈ではあまり使われないFacebookも利用されている。また、イベントでの対面販売だけでなく、TokopediaやShopeeなどの東南アジアの総合ECでネット販売するケースも多い。とらのあななど同人誌専用プラットフォームが中心となっている日本に対し、東南アジアでは一般的なECモールを柔軟に活用している。
久しぶりのBL成分摂取に加え、異国の地の同人誌即売会というフレッシュな出来事に興奮した。人と話し続けているうちに、あっという間に閉会時間の18時になった。閉場のアナウンスが流れると、場内で大きな拍手が巻き起こった。その瞬間、ぐっと来るものがあった。同人誌以上に、知らない人と同じ場所で同じ時間を共有し、「好き」と「情熱」を語り合えることは何よりの幸せだ。
日本のコミケで感じる情熱と熱気をインドネシアでも感じられるとは……。あまり期待しないで訪問したのだが、予想以上の熱を感じた。「好き」でつながる“コミケ的な場”はインドネシアでも確かに息づいている。
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