3年前にソフトバンクからメッツにFA移籍した千賀滉大は大きく落ちる「お化けフォーク」が武器だが、これが見逃されるとシンカー、カットボールなど新たな速球系の変化球で打者を抑えるようになった。
佐々木の同僚の山本由伸も、スプリッターだけでなくスライダー、スイーパーやカーブなどの変化球も駆使してイニングを稼ぐようになった。多くの日本人投手は「使える」持ち球が6~7種類あるのが普通だ。
しかし佐々木は、フォーシームとスプリッターのほかには、あまり精度の良くないスライダーがあるだけ。フォーシームもスプリッターも通用しなくなって、佐々木は「投げる球がなくなった」。
NPB時代、2.10だった防御率はMLBでは4.72に。奪三振率(K9=9イニング当たりの三振数)は、NPBでは11.4だったがMLBでは6.3に。投手の重要な指標とされるK/BB(奪三振数÷与四球数)は、NPBでは5.76だったがMLBでは1.09に。
NPB時代の佐々木の良さ、持ち味はMLBにきて全部吹っ飛んだと言ってよい。5月3日のブレーブス戦でMLB初勝利を挙げたが、佐々木は焦燥感でいっぱいだったに違いない。
大谷翔平も異常があればすぐに球団に報告
「心の問題」もある。佐々木は周囲の「時期尚早」の声を押し切ってMLBに挑戦した。軽々に弱音を吐くことができない、と思っているのではないか。
実は、MLBでは、選手は自身に異状があれば躊躇なく球団に訴える必要がある。自身で抱え込んで悪化させることは許されない。なぜなら選手は、MLB球団にとって重要な「資産」だからだ。球団は、巨額の年俸を支払って契約している選手の異状、異変を細大漏らさず把握する必要がある。選手はそれを常に球団に報告する義務がある。
大谷翔平のような大選手でも、少しでも異状があればすぐにそれを球団に訴え、スタッフと相談して対応を検討する。
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