佐々木は100マイル(約161㎞/h)の速球(フォーシーム)を投げ、高速フォーク(スプリッター)を絶妙のゾーンに投げ込むことができる。剛速球の持ち主で、しかも制球力が抜群。こうした投手はアメリカにも滅多にいないから、MLBにとっては垂涎の的だった。
しかし、ピッチングとは、そうしたポテンシャルに加えて、配球や打者との駆け引き、さらには試合運びなど、自身の投球を活かす「技術」が伴って初めて成立する。さらに不調の時でも試合を作るようなレジリエンスも必要だ。
ましてや、NPBとMLBでは、ボールも、マウンドも、試合環境も、打者も大きく異なる。異なった環境にうまく適応するには、逆境に耐え抜いた経験や、コミュニケーション力など、様々な要素が必要だったはずだ。そうした「投手としてのポテンシャル」とは異なる次元で、佐々木は「万全の準備ができていた」とは言えないのではないか。
山本由伸は佐々木より「経験値」ではるかに上
彼の1年前に移籍した山本由伸は、高校時代から全国の注目を集めていた佐々木とは異なり、都城高から2016年ドラフト4位でオリックスに入団。目立たない存在だったが、当時を知る球団アナリストは「入団時から別格のすごいボールを投げていた」という。
先発で一軍デビューするも、中継ぎに転向する。しかし3年目に先発に再度転向、2021年からはパ・リーグを代表する投手となり、3年連続で投手の最高の栄誉とされる「沢村賞」を受賞。この間チームもリーグ3連覇、年俸も球団史上最高の6.5億円となった。入団時の背番号「43」は2020年にはエースナンバー「18」になった。
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