アドビの新事業育成メソッドが秀逸だった 日本企業も学べるKickboxという仕組み
3年間ですでに1300ものKickboxプロジェクトが行われたが、次のステップに進んだのはまだ25個だ。赤い箱の次のステップで渡されるのは、「青い箱」。この中身はプロジェクトごとに異なるという。
そして、Kickboxのアイデアのいくつかは、すでにアドビシステムズの製品に組み込まれているものもある。
たとえば、ひとつのプロジェクトはアドビシステムズに「Fotolia」と呼ばれるストックフォトサービスの買収を進め、現在では「Adobe Stock」として、写真やビデオ、デザイン素材のマーケットプレイスとして中核的な存在へと発展している。また、デザインやプログラミングのスキルを紹介するオンラインコース、Adobe KnowHowも、Kickboxから生まれたプロジェクトだ。
また女性で出産を経験したエンジニアが提案した「Memory Maker」は、アップロードした写真や音楽を自動的に編集してビデオを作成してくれるソフトウエアで、こちらも主力製品であるPhotoshop Lightroomの最新バージョンの機能として搭載される。
新たな才能の発見に寄与
成功しなかったプロジェクトでも、新たな才能の発見に役立っているという。Kickbox経験者が、それまで経験のなかったプロダクトマネージャー職に抜擢される事例を2つ紹介した。失敗を経験しているリーダーが、社内でその強みを発揮し、よりよい製品作りに生かされる、人材の育成と社内での流動性の高まりがあった。
大企業でこうしたイノベーションの仕組みを、個人に対して提供している企業は珍しい事例だ。アドビシステムズは今年、フォーブスの「世界で最も革新的な企業」に選ばれ、Kickboxは名実ともにアドビシステムズの革新に貢献する存在となった。
なお、Kickboxの資料はすべて、オンラインサイト kickbox.adobe.com からダウンロードすることができる。1000ドルと砂糖とコーヒー、そして革新のノウハウを用意し、社員の隠れた才能を発見するチャンスをつかむ企業は、ほかにも出てくるかも知れない。
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