"名作落ちゲー"はどうやって誕生したのか? 「テトリス」への憧れから「ぷよぷよ」が生まれた《キーワード反転》の発想術

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

壮大な世界ではなく、小さいけれど楽しい世界を描くRPGをつくろう! しかも、当時のRPGは、物語もとにかく壮大だった。魔物が出てきて世界が滅びようとしている。それを救うために大冒険する勇者たち。だいたい主人公は勇者で男だった。

ならば、それも反転させよう。主人公は女の子だ。世界を救ったりしない。しもやけになったから、しもやけの薬を作るために森に材料を採りにいくとか、そんなことをさせよう。あ、これならサンプリングも使えるかもしれない! と、過去に見つけた種と結びつく。

容量をくうから呪文は3つまで

ちょっと前のこと。プログラマが「サンプリング音声のプログラムができたよ」と言うのだ。ぼくは、当時、サンプリングなんて言葉も知らなかった。プログラマーがキーを押すと、家庭用パソコンのMSXから、プログラマーの声を再現した音声が流れてきて、驚いた。

「すげー、これゲームに使えないですか。たとえば、人の顔のグラフィックに合わせて喋って、会話しながら物語が進むとか!」

「おもしろそうだねー、でもムリかな」

「なんで!?」

「サンプリングって容量くいまくるからゲームには不向きだよ」

5秒程度しゃべらせるだけで容量いっぱいになってしまう、とプログラマーは言う。しゃべらせるたびにディスクを読み込みに行かないといけないし、全体の容量も大きくなる。ディスク100枚組とかになっちゃうよ、と言われた。「ゲームのメインで使うのはムリ。タイトル画面で、タイトルを叫ぶとか、そんな使い方だろうね」と、プログラマーは言った。

だがこの小さな世界を冒険する女の子のRPGなら、サンプリングがうまく使えるのではないか。女の子は3種類しか呪文が使えない。その3種類の呪文だけは、ちゃんとパソコンから音声が出るとか。数の多さではなく、1つ1つのことにどれだけ驚きと楽しさを詰め込めるか、そっちの方向でRPGがつくれないだろうか。

その発想で、いろいろなピースをはめ込んでいって、『魔導物語』の企画ができあがった。

次ページメインキャッチコピーだけ大袈裟にした
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事