"名作落ちゲー"はどうやって誕生したのか? 「テトリス」への憧れから「ぷよぷよ」が生まれた《キーワード反転》の発想術
ゲーム機で声を出すことは困難だった時代に、サンプリングボイスの技術で「しゃべる!」というのがウリのゲームだった。
その『魔導物語』のモンスターのなかで一番弱く、もっともやわらかいキャラクターが「ぷよぷよ」である。RPGでは「スライム」と呼ばれることの多いキャラクターだが、『魔導物語』の世界観に合わせて「ぷよぷよ」という名前にした。
その「ぷよぷよ」を出そう。いや、世界観をまるごと『魔導物語』から持ってくればいい。そうすれば、新しい世界観をつくりだす必要もない。使い回しだ。
幸いコミカル冒険ものなので、全体の印象もソフトだ。サンプリングでしゃべるのもいい。しゃべる落ちものパズルゲームってのもいいじゃないか。これで、会社に行ける。休んだぶんの成果をひっさげて出社するのだ。
制作期間をえんえんと延ばせたワケ
この後、迷うことなく制作に邁進して、名作が完成した! となればよかったのだが、そうはいかなかった。
ぼくの頭の中では、傑作が動いているのだが、それは実際につくってみると、おもしろくなかった。妄想だった。
とくに操作方法もソフトにしようとして、カルガモの親子みたいに、ぷよぷよの後を追うようにぷよぷよがついてきて、それを華麗に設置するという操作体系にしたときは、あまりのおもしろくなさ(操作しにくい!)に唖然とした。
「『テトリス』の魅力はソリッドだからできたのであって、ソフトにすると成立しないんじゃないか」。コンセプトそのものを疑ったりもした。もし、これが正式な会社のプロジェクトだったら、大失敗していたと思う。
幸いなことに、ボツになろうとしていた『どーみのす』を引き継いだプロジェクトだったので、ぼく自身も、プログラマーも、『ぷよぷよ』以外にメインのプロジェクトを担当していた。だから、『ぷよぷよ』は、放課後の部活の感覚で仕事が終わったあとに、日々数時間だけやっていた。
ぼくが新しい操作方法を紙に書いて渡して、それをプログラマーが組み込んで、それを遊んで、ダメかーってなって、ぼくがまた翌日までに新しい操作方法を考えて紙に書いてくる。その繰り返しだ。何度もやった。
この期間中、会社が忘れていてくれたのが幸いした。プロジェクト会議で報告し忘れても怒られなかったので、その後、報告しなくなった。それで、当時では考えられないくらい制作期間を延ばすことができたのだ。
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