独身で養子迎えた彼女が「親として」心がけたこと 複雑な過去を持つ次女をどう育ててきたか
このような〝養子縁組を前提とした子どもの引き取り〞は、2020年のジョンインちゃん事件(*1)発生以降、「養子縁組ショッピング」という言葉で非難されるようになった(*2)。ただし、これはわたしが経験したこととは意味合いがまったく違う。
当時、養子縁組機関の社会福祉士は子どもの人見知りと新しい環境への適応を心配して、生後5〜6カ月のうちにまず引き取って育ててはどうかとアドバイスしてくれたのだ。実際にそうできていたら、養子縁組後に次女とわたしが大変な苦労をすることもなかっただろう。
新しい環境を拒否した次女
家庭裁判所の許可が下りると、怒涛の日々が始まった。次女は一夜にして養育者が変わったことをとても不安がり、ひきつけを起こしたように震えながら大泣きした。
すでにお話ししたとおり、養子縁組が確定するまでの数カ月間、わたしと長女は何度も次女に会いに行って一緒に遊んでいた。それでも養育者と環境ががらりと変わるというのは、里親を母親だと思っていた次女にとって、世界が崩れるような衝撃だったにちがいない。
命の危険を感じているかのような、切羽詰まった泣き声が家じゅうに響き渡った。次女をあやしながら、この子は将来ロック歌手になるかもしれないと思ったくらいだ。夜通し泣き声が続いて、わたしと長女はあまり眠れなかった。当時の家は商住混在ビルだったからよかったものの、もしアパートやマンションだったら、ご近所さんに通報されて追い出されていたかもしれない。
次女がやってきてから数カ月後にマンションに引っ越した。そこでも一度泣きはじめると、マンションの敷地じゅうに大きな声が響き渡った。幸いなことに不安症状はしだいにやわらいで、激しく泣くことは減ったので、隣人から苦情が入ることはなかった。わが家に来たばかりの頃は米のとぎ汁のような下痢をしていたけれど、それもだんだんよくなって、黄褐色の健康なうんちをするようになった。
表情が暗くて元気のなかった次女は、愛嬌たっぷりのかわいらしい子どもに成長していった。それでもストレスを感じるようなことがあると、最初の頃と同じような不安症状を見せて何もかもを拒み、大声で叫びながらもがいた。そんなときは次女を長い間抱きしめた。次女が完全に落ち着くまでには何年もかかった。
上手におしゃべりができるようになってからは、納得できないことがあったら相手に自分の感情をきちんと伝えて、仲直りをするためのコツを教えた。今は、気分をそこねても暴れたり大声を出したりすることはほとんどない。
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