「もともとは水道橋にあった店舗の店長を務めていた方なのですが、そのときに水道橋限定でかつ丼を発売したんです。その後池袋店に異動となってからもかつ丼を販売していると、あるお客さんから『かつカレーが食べたい』と言われたそうで、そこからカレーかつ丼の開発が始まりました」(工藤さん)
なぜ「かつカレーが食べたい」という声を受けたのに「カレーかつ丼」という着地になったのか、気になるところ。
工藤さんによると、富士そばは立ち食いがルーツであることから、スピーディーに商品を提供するために基本的にかつを「揚げ置き」しています。これが「かつ丼はあるのに、かつカレーが(ほとんど)富士そばにない」ことの答えです。
つまり、揚げ置きしたかつでも、鍋で卵とじにしてあたためられるかつ丼ならおいしい状態で提供できますが、カレーの上にかつを載せるかつカレーでは、揚げ置きでは不十分だと判断し、基本的にかつカレーを提供していないのです。
だからこそ、かつカレーが食べたいという声から、かつが温かい状態で、なおかつカレーも楽しめるメニューとして「カレーかつ丼」という結末に至りました。
ちなみに現在は平らな皿で提供されるカレーかつ丼ですが、もともとはかつ丼にカレーをかけて提供していたとのこと。「それでは見た目のインパクトがないため、より洋風に見えてユニークな現在の形に変更しました」と工藤さんは振り返ります。
ちなみに「富士そばといえば」という商品の筆頭格である、肉富士そば(うどん)も、この店長が考案したとか。工藤さんいわく「お客さんが求めるのは肉だ、という強い信念を持って数々のメニューを開発された方です」とのこと。
「売れる」のに、なぜか「売らない」店も
2025年で30周年と、長い歴史を持つカレーかつ丼ですが、その特徴はそば用のだしをカレールーや、かつの卵とじに使っていることだと工藤さん。
その他では、かつの厚さにリニューアルを加えたり、具材のゴロゴロ感を出すために何度もカレーの変更もしたりしてきたといいます。
「特に大きく変わったのが、15年ほど前にカレーのコンセプトとして『家庭の味の延長線上』を打ち出したタイミングでした。
それまではこれといった軸がなく『おいしければ良い』という考え方でリニューアルをしていたのですが、以降は家庭で味わうカレーを軸に、若干辛さを足したり、具材を増やしたりといった改良を重ねています」
面白いのが、カレーライスは全店、かつ丼も笹塚店を除いて提供しており、理論上は笹塚店以外でかつカレー丼を提供できるにもかかわらず、そうなっていないこと(コラボフェア時などを除く)。
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