耳が聞こえない、または聞こえづらい親のもとに育つ子どもたち、「CODA(コーダ)」。
一昨年、アカデミー賞などを受賞した映画『Coda コーダ あいのうた』で、その言葉を初めて知ったという人も多いでしょう。ろう者の世界と聴者の世界の両方に身をおくコーダは、幼い頃からちょっと特有な経験をしています。
今回お話を聞かせてもらった梨奈さん(仮名)は、都内に住む高校生。取材応募フォームを通じて「私はコーダです」と連絡をくれたのですが、メッセージを読むと、記事にしてほしい気持ちと、してほしくない気持ちが両方あるようです。
そこでまずはお話を聞かせてもらって、それから原稿にするかどうか相談しましょうか、ということに。6月の平日の午後、学校帰りの梨奈さんを待っていると、制服姿の女の子が小走りで現れました。ちょっと緊張気味の笑顔です。
さて、梨奈さんには今、どんな思いがあるのでしょうか。
親子でも「伝わっているのかな」と感じるときがある
梨奈さんは3人きょうだいの真ん中で、ろう者の両親と5人で暮らしています。親との会話は基本、手話。親子なら話は通じるよね、と漠然と思っていましたが、きょうだいのなかでも親とのコミュニケーションの仕方には違いがあるようです。
「うちの場合は姉が特に手話が上手で、(生まれ順が)下がっていく順に下手になっていく(笑)。弟のはときどき、私や姉には読み取れないんですよ。親には伝わってるみたいだけど、数年前に『なんて言ったの?』って聞いたら、親も『よくわかんない』って言ってたこともあって。いちいち聞くのも面倒なので、流している部分もあるんですよね」
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