「耳が聞こえない両親」の娘が語った複雑な本音 葛藤してきた彼女が親のことを話せるようになった訳

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聞けば、コーダのなかには親とのコミュニケーションは「口話(口の動きを読み取る)だけ」とか「筆談だけ」という人もよくいるのだそう。そういえば、筆者の知り合いでも、手話は使わず口話のみで会話している、ろうのお母さんがいます。

いろんな親子がいるのでしょう。「親が子どもたちにどれくらい通訳を頼っているか、子どもが親をどれだけ助けたがっているか」といったことも、家庭によってかなり度合いが異なるのだそうですが、梨奈さんの親はあまり子どもに頼らないほうだといいます。

最近は学校で「三者面談」があったのですが、梨奈さんのときは両親と手話通訳が同席したため「五者面談」となり、面談室がいっぱいになったとか。大人が多くて「圧迫感」があり、思っていることを素直に話しづらかったといいます。

また、「総合型選抜(旧AO入試)」や「志望理由書」など、大学受験に特有の言葉や概念は、通訳の人がいてもなかなか両親に伝わらず、面談が長引いてしまったそう。

聴者である筆者でも、子どもの受験のときは、最新の入試の仕組みや用語を理解するのには一苦労でした。日本語と異なる手話という言語でそれを伝えるのは、なかなか大変なことだろうと想像します。

梨奈さんも勉強で忙しいときなどは余裕がなくなって、「伝わらないなら、もういっか」と諦めてしまうこともあるのだそう。「反抗期がちょっと遅くて、今」なこともあり、最近は親との会話がちょっと減っているといいます。

でも、勉強を頑張っていることなどを親にわかってほしい気持ちもあり、もどかしさも募っているようです。

「私が(手話で)しゃべってることが全部伝わってるのかも、よくわからなくて。弟にしているみたいに、私に対してもわからないまま流してる部分があるんじゃないかな?って」

聴者の親子でもコミュニケーション不足はよくありますが、常に「伝わっているのかな?」という心もとなさがあるのは、コーダ特有のところなのでしょう。

ある授業をきっかけに親のことを話せるように

親がろう者であることや、人前で手話で話すことについて、梨奈さんはこれまでいろんな思いを抱いてきました。

小学生の頃、友達が家に遊びにきたときに親から「一人ひとり紹介して」と頼まれたときは、手話で名前を伝えたものの、「友達がすごく珍しそうに見てくる」のがイヤだったそう。「どうして友達の前で手話をさせるんだろう?」と感じたといいます。

中学生の頃も「知られたくない」という思いが強かったと振り返ります。

「人に言うこともなかったです。やっぱり親が障害者だからというので変な目を向けられたくなかった、というのがあって。親のことは好きなんだけれど、親が聞こえないことが、イヤだった」

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