ランチは食堂で「シャクシュカ」を食べた。細かく刻んだ玉ねぎをトマトソースで軽く煮込み、その上に卵を割り落としたイスラエルの家庭料理だ。
本来ならば、チベットの伝統料理を食べるべきなのだが、チベット料理は種類が少なく、スピティに来てからずっと同じ食べ物が続いていたので、少し違うものを食べたくなったのだ。
シャクシュカはとても美味しく、日本の表参道あたりでお店を出したら流行るかもしれないとさえ思えた。そして、この村でトマトの栽培が行われているということがわかった。
伝統的なチベット建築の家並みが続く
それから、2人で村の中心にあるナコ湖へと向かった。途中、迷路のように入り組んだ路地を抜けると、老朽化した石造りの民家が密集して立ち並んでいた。
これらの民家は、カザ村やムド村とは異なり、伝統的なチベットの建築様式で造られていると昨夜の雑談で聞いた。
ナコ村はインドの都市部から陸路での移動が困難なヒマラヤの最奥地にあり、その反対側には、中国との国境線にそびえる標高6791メートルのレオ・プルギル山がある。
この孤立した地理的条件が幸いし、インドや中国からほとんど影響を受けていない伝統的なチベット文化が、まるで時間が止まったかのように今もなお生き続けている。
まさに、オリジナルのチベット文化を後世に伝えるための重要な歴史遺産に違いない。
その住宅街の中を歩いていると、石を積み上げた高さ3メートルほどの古い円錐形の塔が目に入った。頂上辺りの塗装は剥げ落ち、長い年月、風雨に晒されているのがわかる。
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