彼は、長年ここに住み込み、修行をしている僧侶であるという。それから、寺の中にある仏像や壁画、フレスコ画を見ながらチベット仏教の歴史や哲学などを丁寧に教えてくれた。
聖地で学んだ僧侶に瞑想の極意を聞く
ナコゴンパは偉大な翻訳家リンチェン・サンポによって創設された100以上のゴンパの1つで、その中でもかなり重要な役割を果たしている。
10世紀に生まれたリンチェン・サンポは仏教の経典をサンスクリット語からチベット語に翻訳し、それにより、ヒマラヤ地域に仏教を普及させたチベット仏教の歴史における重要人物である。
神聖なる場所で修行する僧侶から学ぶ機会は滅多にない。危険を冒し、ヒマラヤの奥地でつかんだこの偶然のチャンスを逃すまいと、以前から気になっていたことを尋ねてみた。
「すみません、実は瞑想が得意ではないのです。南インドのヨガアシュラムで1カ月ほど修行したのですが、どうしても瞑想中に余計なことを考えてしまいます。何かいい方法はないでしょうか」
すると、僧侶は笑みを浮かべて答えた。
「実は私もちゃんと瞑想ができなくてね。もう30年以上毎日やっているんだけど、なかなか難しいよね」
30年以上も毎日瞑想をしていてできないなんて、謙虚すぎると思った。彼はきっと、秘訣などを知っているに違いない。
「何かうまくいく方法はないですかね。ご自身がうまくいった経験などでいいんで教えていただけませんか?」
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