テレビディレクターの取材魂に火がついてしまった。好奇心という名の「煩悩」が、剥き出しになる。
「そうだね。私の場合は、眉毛と眉毛の間の部分にブッダの顔をイメージするんだ。それでも煩悩が出てくるときもあるけど、結構うまくいくことが多いよ」
邪念が浮かび瞑想どころじゃない
「どんなブッダの顔を思い浮かべればいいですか?」
「君が知っているブッダの顔ならなんでもいいよ。別にブッダでなくてもいい。おでこに君が集中できそうな何かをイメージすれば、上手に瞑想状態に入れると思う。私の場合は僧侶だから、たまたまブッダを思い浮かべるだけだよ」
脳内で自分が知っているブッダを考えてみたが、スラムダンクのホワイトブッダ、安西先生しか思いつかなかった。だが、高校バスケ部時代のキツイ合宿を思い出し、瞑想どころではない。
「そうなんですね。頑張ります」
そう答えると、彼は仏様のような笑顔を見せた。
「まぁ、そんなに意気込まなくても大丈夫だよ。気が向いたときに瞑想をすればいい。その代わり、長く続けることだけは忘れないでね」
ヒマラヤの奥地にある神聖なるゴンパで修行する僧侶だから、厳格で難しい人をイメージしていたが、とても気さくで、包み込むような優しさを感じた。そして、とても自然で素敵な笑顔を見せる人だった。
それから、2人でゴンパの周りを探索していると、少し離れた場所に四方をタルチョで囲まれた吹きさらしの建物を見つけた。
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