足場の悪い崖道を歩いていくと、そこにはまるで日本のお寺の鐘つき堂のようなものがあった。しかし、鐘だと思ったものはそうでなく、黄金の円柱が吊るされていた。表面にはチベット文字が刻まれている。
大自然とマントラの力が村を守る
それは、マニ車と呼ばれるもので、内部には「オム・マニ・ペメ・フム」などのマントラ(経文)が書かれた巻物や紙が収められている。
回ることでマントラを唱えるのと同じ効果があるとされる祈祷具。
マニ車の上下四方に銀色のお皿が設置されていて、その皿が風を受けると、同期された円柱がくるくると回転する。シンプルだけどよく考えられた構造だ。
マニ車からは、遠くにある神々しい山々とナコ村が一望できる。
大自然の風の力により回転することで、マントラが唱えられ、魂の浄化と厄災から村を守ってほしいという、住民たちの平穏への願いが込められているのだろう。
「ごっつさん見てください。大きな鳥です」
カナさんが上空に舞う、一羽の大きな鳥を指差した。
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