サイゼリヤが上海に中国1号店をオープンしたのは2003年12月。1990年代に中国進出した吉野家、味千ラーメンの成功に加え、2001年12月にWTO(世界貿易機関)に加盟したことで中国市場の潜在力が注目され、日本の外食企業の最初の中国進出ラッシュが起きた時期だ。
2000年代前半はリンガーハット(2002年)、カレーハウスCoCo壱番屋(2004年)、ワタミ(2005年)、ペッパーランチ(同)などが進出したが、中国人消費者の食文化が今ほど多様化していなかったことや、安いローカルフードを提供する現地チェーンの急成長もあって、いずれも思うようには店舗を増やせなかった。
サイゼリヤも例外ではなかった。洋食文化が根付いておらず、知名度もゼロ。苦戦を強いられた同社は、大半のメニューを半額程度に値下げした。
その結果、価格競争力が一気に向上し、新しもの好きの若者がこぞって訪れるようになった。この“英断”が功を奏し、サイゼリヤの中国本土の店舗は2013年8月期末までに150店舗を超え、吉野家、味千に続く成功例となった。
新規出店と並行し、広州に自社工場を設立したり、比較的テナント料の安いエリアに店舗を出すなど、コスト削減の取り組みも進めた。
大学生だった2000年代後半に北京のサイゼリヤに通っていた30代中国人女性は、「首都の北京でも洋食の料理店は少なかったし高かった。高級料理のイメージがあるイタリア料理を、学生のお小遣いで食べられるサイゼリヤに行くのは新鮮な体験だった」と懐かしむ。
景気低迷による節約志向が追い風に
コロナ禍が収束した2023年春以降、中国本土のサイゼリヤは再び上昇気流に乗っている。景気低迷による節約志向を追い風に、圧倒的なコスパの高さが改めて注目されているからだ。
同じ「大衆イタリアン」のセグメントに属するピザハットと比べても、ピザやサラダ、パスタの価格はおおむね3分の1と、値頃感が際立つ。
サイゼリヤの安さの秘密を解説する動画の拡散などを機に、初めて同社が日本企業だと知る人も少なくない。