年収500万の公務員が「貧困取材」を受ける事情 生きづらさは「日本特有の人間関係」にある?

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シンイチさんがこれまで参加してきたフォーラムや研修会の資料。発達障害の特性であるこだわりの強さが発揮された“成果”ですねと水を向けると、「欠点も視点を変えると長所になるという考え方を心理学用語で『リフレーミング』というんです」と教えてくれた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「人事評価は常に最低ランクで、転職組ということもあり、年齢には見合わない収入です」と編集部にメールをくれた40代の男性だ。

「障害者のふりをしている」と早合点

「私、目が悪いんです」

地方自治体で働くシンイチさん(仮名、40代)は異動先の部署で、同僚女性からこうあいさつされた。後に視野が狭くなる視覚障害があることを知るのだが、このときは「視力が低い」という意味だと思い込んだ。女性の障害のことは、元からいる職員たちは知っていたが、書類を読んだり、歩いたりすることはできるため、中には「障害者じゃないよね」などと陰口を言う人もいた。

最初の思い込みと、周囲からの陰口が交錯した結果、シンイチさんは「視力が低いだけなのに、障害者のふりをしている」と早合点する。そしてついに本人に向かって「あなた、見えてるじゃん」と口走ってしまう。女性の仕事にミスがあったこともあり、ついきつい口調になったと、シンイチさんは認める。

このやりとりは想像以上に大事になった。女性が「パワハラを受けた」と訴えたからだ。シンイチさんは複数の上司から呼び出され、2時間以上にわたって「障害者差別解消法を知らないのか!」「お前がやったことは差別だ!」などと叱責された。

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