「働き口がない」早稲田院卒55歳男性のジレンマ 美しい文章を操る能力と「振る舞い」のギャップ

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発達障害
定職に就くことができない原因について、ケイスケさんは「自分の努力不足と社会の(発達障害への)認識不足、半々だと思います」と分析する(筆者撮影)
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現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「海外で大学教員をしていたこともありましたが、日本に引き揚げてからは壁にぶち当たってばかりです」と編集部にメールをくれた55歳の男性だ。

美しい日本語で綴られたメール

ケイスケさん(仮名、55歳)に取材依頼のメールを送ったところ、返信の件名欄に「奉答」とあった。つつしんで答えるという意味だ。本文では取材に応じますとの旨と、所用で都合のつかない日程が記載され、「無理なお願いの数々、枉(ま)げてご容赦頂ければ、幸甚至極でございます」。最後は「御健勝と御活躍とを心より念じ上げます」と結ばれていた。

ケイスケさんは早稲田大学の大学院を修了。博士号を取得し、30代のころは台湾の大学で専任教員を務めた。しかし、50歳を過ぎてから発達障害の診断を受ける。もともと得手不得手の差が激しく、現在はパートや障害者雇用で働くことも難しいという。

メールでの言葉選びにわずかな堅苦しさを覚えつつも、それ以上にていねいで美しい日本語が印象に残った。

一方で実際に会ったケイスケさんはファミレスのボックス席に座るや否や、自身の主治医との出会いや中高年の発達障害の人たちによる当事者団体のこと、本連載の内容を批判するユーチューバーのことなどを矢継ぎ早に話し始めた。

次ページ会話を制止しながらの取材
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