現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「ADHDと広汎性発達障害を抱えている」と編集部にメールをくれた40歳男性だ。
毎朝、職員全員で絶叫させられる
「必ずやる! できるまでやる! 俺がやる!」
今から20年近く前、大学を卒業したダイゴさん(仮名、40歳)が就職したのは、民営化前の日本郵政公社(現在の日本郵政グループ)だった。配属されたのはかんぽ生命保険の営業職。出社早々、ダイゴさんを絶望的な気持ちにさせたのは、毎朝、職員全員で絶叫させられる、この唱和だった。通称“やる唱和”。
周囲とコミュニケーションを取るのが苦手で、子どものころはよくいじめられたというダイゴさんにとって「集団でのいじめを思い出させる体育会系の空気は苦手でした」。
“やる唱和”の是非は置くとして、職場では過剰な営業ノルマも常態化していた。成績のふるわない先輩職員が上司から「辞めたほういいんじゃないか」「こんな成績じゃ、局長が表彰されないだろう!」と怒鳴りつけられる姿をたびたび目にしたという。
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