創部67年目で花園全国大会に初出場、「塾高じゃないほうの慶応」志木高ラグビー部が起こした"奇跡"の軌跡
後半30分を過ぎた、ロスタイムのラストワンプレー。ラインアウトからモールを形成した相手チームがじりじりと押し込み、自陣1メートルほど手前まで迫る。伝統の黄と黒の「タイガージャージ」をまとった選手たちが、低いタックルで猛攻に耐える。
すると、根負けした相手が痛恨のヘッドダウン(密集時に頭を相手の進行方向や地面に下げすぎてしまう反則行為)。ペナルティキックを場外に蹴り上げると同時に、レフェリーのホイッスルが鳴る。「その瞬間」はついに訪れた。
21対19。熊谷ラグビー場で行われた「第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会」埼玉県予選(第2地区)の決勝戦。2点という僅差で慶応義塾志木高校が一昨年の覇者・川越東高校を下し、悲願の初優勝を果たした。
創部67年目にして初めて手にした「花園」の切符。その快挙に生徒、保護者、OBをはじめとした大応援団のボルテージは最高潮に達し、スタンドは歓喜と興奮のるつぼと化した。そして、その視線はグラウンドの指揮官へと一斉に注がれた。
「……本当に長かった40年間でした」
インタビューのマイクを向けられた同校ラグビー部の竹井章監督は声を詰まらせ、涙をぬぐった。その40年間の苦労をねぎらい、そして偉業をたたえるかのように、スタンドからは「タケイ! タケイ!」と「竹井コール」が送られた。
慶応高校に比べて知名度で劣る「シキコー」
「あのとき、スタンドに目をやると、教え子たちの顔がたくさん見えたんです。アイツもいる、アイツも来ているな、と……。彼らの代で負けた当時の記憶もよみがえってきて、思わず目頭が熱くなっちゃいましたね」
熊谷での歓喜から2週間。竹井監督は当時の心境を振り返り、顔をほころばせた。



















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