創部67年目で花園全国大会に初出場、「塾高じゃないほうの慶応」志木高ラグビー部が起こした"奇跡"の軌跡

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ラグビーという競技は、いったんフィールドに出ると監督やコーチを頼ることはできない。選手たちがその場で次のワンプレーを決断しなければならない。普段の練習での「自ら考える習慣」の差が、ギリギリの局面で勝敗を分けるのだ。

トレーニング
過酷な練習の積み重ねの先に全国大会への切符を手にした(撮影:風間仁一郎)

体育の教員でもあり、来年には定年を迎える竹井監督。その40年間の指導歴の中で、地道に築き上げてきた「財産」がある。それはOBの存在だ。

週1回の「出稽古」に胸を貸してくれた、慶応大学ラグビー部。同部を率いる青貫浩之監督が現役時代にコーチを務めていたのが、実は慶応志木高のOBなのだ。「自分がお世話になったコーチの恩師だから、何でも協力したい」と、練習への参加やコーチの派遣を快諾してくれた。また、前出の冨岡氏も同校OBからの紹介によるものだ。

OBのサポートは、グラウンド外にもおよぶ。学業成績が留年ライン付近の“イエローカード”の部員に対しては、高校時代に成績優秀だったOBの大学生が「家庭教師」につき、レポートの書き方やテスト対策などを徹底指導する。

「慶応マイノリティー」の強い絆

慶応のOB組織「三田会」は、早稲田の「稲門会」と並んでその絆の強さで知られる。そこに加えて「志木高」と「ラグビー」の経歴を併せ持った人はかなりの少数派だ。この「慶応マイノリティー」の絆が強固なスクラムを形成し、現役部員をあらゆる方向からバックアップする。

ベスト8、ベスト4の壁に涙をのんできたOBたちの思いも一身に受け、花園のフィールドに立つ慶応志木フィフティーン。竹井監督は、大舞台での抱負を次のように語る。

「どこまで勝ち進めるかは相手のある話なので、正直わかりません。それよりは、『自分たちのベストを上回ろう』と部員たちには話しています」

埼玉県予選決勝
花園でも自分たちのベストを貫けるか(写真:荒木博行氏提供)

「自分たちのベスト」とは、精神論ではない。部員たちは練習を含む日々の生活で、GPSセンサーを内蔵したデバイスを身につけている。収集された加速度のデータから、その日のパフォーマンスが数値化されるのだ。

竹井監督は「このパフォーマンスのスコアで、決勝の川越東戦を上回ることが目標です。そのベストを出すために、彼らは残り少ない期間を一生懸命準備に費やしています」と、楕円球を追う部員たちに目をやった。

都会育ちの塾高生に比べ、あかぬけないけど実直で真面目。それが、昔も今も変わらぬ「志木高生」評だ。そんな彼らの初陣は12月27日、対戦相手は青森山田高校(青森県)に決定した。「シキコー」の名を全国に知らしめる、その舞台は整った。

堀尾 大悟 ライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ほりお だいご / Daigo Horio

慶応大学卒。埼玉県庁、民間企業を経て2020年より会社員兼業ライターとして活動を開始。2023年に独立。「マネー現代」「NewsPicks」「新・公民連携最前線」などで執筆。ブックライターとしても活動。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事