創部67年目で花園全国大会に初出場、「塾高じゃないほうの慶応」志木高ラグビー部が起こした"奇跡"の軌跡
85年に同校に赴任して以来、40年もの長きにわたり部員たちを見守り続けてきた竹井監督。20~30代の青年監督時代は「理想のラグビーを追い求め、自分の考えを部員に押しつけることもありました」と振り返る。
「でも、生徒が『はい』しか言わないことに気づいたんです。『なんでこうやったんだ?』と聞いても『はい』と返ってくる。そのほうが楽だからなんですよね。そこから生徒たちの自主性に任せ、考えさせる方針に切り替えました」
毎週月曜日には部の目標、フォワード・バックスの目標、個人の目標の「3つの目標」を部員たちで話し合って設定。週の終わりに目標が達成できていたか、できていない場合は何が原因かを振り返る。こうした地道なPDCAサイクルを、各部員が週単位で回し続けている。
昼休みには誰に言われるでもなく、部員たちがウェートルームに集まる。そして昼食をとりながら、竹井監督が持ち込んだワールドカップや代表戦などのビデオを観て「どうしたら自分たちはこのプレーをできるようになるか」など議論を交わす。
自主性に委ね「考える習慣」を身につけさせる
部の運営方針も部員たちで決める。ある日、キャプテンが竹井監督にこう提案したという。
「僕たち3年生が荷物当番をやりたいんです。1年生に雑務をやらせるとイヤになって辞めてしまうから……」
ラグビーの大学王者・帝京大学では、荷物持ちやグラウンド整備、掃除などの雑務は上級生が担当する「決まり」がある。そのことを知った部員たちが、自ら取り入れたいと申し出たのだ。
「でも結局、試合に出た3年生が荷物を背負っているのを見た1年生が『自分がやらなければ』と気づき、率先して手伝うようになるんですよ」と、竹井監督は目を細める。
日々の練習での気づきを書きとめるラグビーノートも、「好きなときに提出して」とあえて強制はしない。提出を義務づけると「やらされ感」で内容が雑になるためだ。
「それでも、キャプテンをはじめレギュラーの部員が毎日提出していたら、周りもおのずとそれに引っ張られるようになる。それに、書いた内容はミーティングで発表することもある。『ヘタな内容は書けない』と緊張感が自然に生まれます」



















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