92歳「"球界の嫌われ者"の言葉」が圧倒的に響く訳 「何者にも屈しない」姿は、なぜ生まれたのか?

スローイングを「試合1時間前」に矯正
初のコーチ稼業として情熱を燃やした広島東洋カープ時代の前編でも広岡のすごさが垣間見えたが、ヤクルトスワローズ時代に入ってさらに存在感を増していく。
1979年4月24日県営富山球場にて大洋2回戦。ヤクルトスワローズの先発マスクは八重樫幸雄が被った。
「前日に、広岡さんから『明日行くぞ。1時間前に監督室に来い』と言われたんです。監督室に行くと、そこで『素振りしろ』と命じられました」
監督室で素振りをする八重樫を見て、広岡は鋭い視線を送る。
「ハチ、反動つけちゃダメだ」
淡々とした物言い。広岡の教えとは、自分で決めたトップの位置を変えずに、そのまま最短距離で振り下ろす。構えたところから少しでも動いたり、遊びを作ったりすると「ダメだ」とNGを容赦なく連発する。
八重樫は投球に合わせて身体をひねったり、タイミングを取ったりしながらトップを作っていくタイプだっただけに、広岡の言う理論が合わなかった。とりあえず言われた通り何度も素振りを繰り返していると、沈黙していた広岡が口を開く。
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