住民の足のはずが…「ライドシェアの思わぬ効果」《役場も驚いた"普通の町民"のおもてなし力》人口6000人を割った小さなまちに起きた変化

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智頭町に戻ってドライバーをしている赤堀さん
自衛隊を退官後、故郷の智頭町に戻ってドライバーをしている赤堀さん(写真:筆者撮影)
鳥取県智頭町を短期滞在のため訪れた筆者。町営バスと民間のタクシー会社が撤退してしまった町で移動の足に困っていたところ、町民の自家用車を使った共助交通「AI乗合タクシー のりりん」の存在を知りました。実際に利用してみて、体感したこととは。
前後編の2回にわたってお届けしています。
前編はこちら→バスもタクシーも撤退した過疎の町、町内の移動を守るのは「AI乗合タクシー」。役場職員も時には運転手に。続ける住民との対話、見出す活路
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人口が6000人を割り、乗務員の担い手不足に悩む鳥取県智頭町は2023年に町営バスを廃止し、町民ドライバーが有償で客を輸送するライドシェア「AI乗合タクシー のりりん」を立ち上げた。

バスがなくなることに町民の反発は大きかったが、当初、2000人前半だった乗客数は昨年10月3000人台に乗り、今年10月に4000人を突破するなど右肩上がりで増えている。

利用者の増加に大きく貢献しているのが外国人や観光客だ。同町は観光客のヒアリングから、町の人たちが気付いていない「のりりん」の魅力を知ったという。

ライドシェアは観光客に“はまる”

「のりりんは町外の人でも利用できますが、観光客向けの分析や施策は特にやっていませんでした。だから『遊ぶ広報』で町に来た旅行者から聞いて、観光客にそんなに刺さっているのかと驚いた次第です」

智頭町企画課の長谷龍太郎さんはそう話す。

「遊ぶ広報」とは同町が24年度から実施する、滞在型の観光を促進するプログラムだ。智頭町に2週間滞在し、SNSで町の魅力を発信してもらう代わりに滞在補助を支給する。今年度は6月から合計30人を受け入れている。

「地域と継続的に関わる関係人口の創出を目指す取り組みですが、初年度の昨年は知らない間に皆さんやって来て帰っていく感じで、ほとんど関わりが持てていませんでした」(長谷さん)

2年目の今年は、遊ぶ広報の参加者を町のラジオ番組のゲストに呼ぶなど、交流を増やすようにした。その中で、「のりりん」が旅行者にとって強力な訴求ポイントになっているのを知ったという。

板井原集落
ほとんど人が住んでいない板井原集落は、町営バスのルートにはなく、のりりんの運行で車を持たない旅行者も気軽に行けるようになった(写真:筆者撮影)
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