廃墟の「蔵」を「泊まれる宿」に改修→地方のまちに生まれた新しい動き。全国に点在する「蔵」、眠っている資産の生かし方

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鹿沼市内の蔵
鹿沼市内の蔵は石造りのしっかりしたものが多い(写真:筆者撮影)
さまざまな工夫で新たな住まいや仕事場となったり、文化的拠点に生まれ変わっている“廃居(廃虚)”を紹介している本連載「広がる新しい暮らし方 "廃居"という磁力」。
15回目となる今回は、「蔵(くら)」の再生事例を紹介する。

歴史のあるまちに多く点在、何十年も放置され続けてきた建物がある。空き家として認識されることは少なく、堅牢に作られているため、解体には住宅以上に費用がかさむこともある。それが「蔵」だ。

住宅のように外から分かるほどに廃墟化することは少ないが、無用の長物としてお荷物になってきた蔵を活用し、地域を変えようという動きがある。

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観光資源にもなりうるが放置された「蔵」も

かつて蔵は富の象徴だった。そのため、街並みに合わせて作られることの多かった母屋(主屋)などに比べると贅(ぜい)を尽くし、自由な発想で作られているものが多い。

「分かりやすいのは蔵を彩る鏝絵(こてえ。左官職人が漆喰で壁に施す立体的な絵)の存在。

その家にとって大事な文書や道具類、着物などを入れる建物ではあるものの、役割としては倉庫。そんなに飾る必要はない場所であるにもかかわらず、繁栄への祈りを込めて多種の装飾で美々しく飾り立てた。

それをするだけの財力があり、地域に腕のある職人集団がいたということでもあり、蔵は過去のその地域の歴史、文化の高さなどを伝える存在です」と一級建築士で東日本大震災を機に全国の蔵の実測調査に関わるようになった渡邉義孝さん。

鏝絵蔵
新潟県長岡市にある鏝絵で有名な旧機奈サフラン酒造本舗の鏝絵蔵。創業者が財を投じて作らせた(写真:筆者撮影)

ただ一方で蔵は神聖な場所という思いからか、第三者の立ち入りをタブーとする意識も強い。それが放置される蔵が多い理由のひとつだという。

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