廃墟の「蔵」を「泊まれる宿」に改修→地方のまちに生まれた新しい動き。全国に点在する「蔵」、眠っている資産の生かし方

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「実家の隣の住宅が売りに出ていたのを父が購入、大学卒業後地元に戻って就職した私が住んでいたのですが、半年ほどで退職。アルバイトをしようと訪れたバーがちょうど内装工事中で、オーナーがセルフビルドをしているという。一人でも店は作れるんだと知ってびっくり。自分もそんなことがしたいと手伝わせてもらいました」(風間さん)

その後、住んでいた家をカフェに改装しようと考え、バーのオーナーに倣ってセルフビルドをスタート。半年かけて一応の姿にしたところで開業にこぎつけた。

駅から遠い住宅街の路地の奥というロケーションで、しかもSNSのある時代ではなかった。鹿沼ではまだカフェすら一般的ではなく、周辺からは「こんなところに店を出しても人なんか来ない」とさんざん言われたそうだ。

根古屋路地
根古屋路地と呼ばれる路地の奥に風間さんがDIYして作った日光珈琲の1号店CAFE 饗茶庵(現・日光珈琲 饗茶庵本店)がある(写真:筆者撮影)

鹿沼は宇都宮からJR日光線で10数分の距離にあり、鹿沼の人たちの消費の場は宇都宮。宇都宮で買い、食べ、遊んできたのだ。だが、風間さんは地元に宇都宮にない店があれば人は来ると考え、開業後もこつこつと7年に渡ってDIYを続けた。

親に払う家賃5万円と自分の食費だけ稼げればよいと客と会話をし、宇都宮のバーで「鹿沼の分かりにくい場所に面白いカフェができたらしい」と他人ごとのように噂を流し、フライヤーを置いてもらい……。

「迷いながら来てください、と伝えたのが興味を引いたのか、面白がって訪ねてくれる人が増え、1年ほどで客が来るようになり、気がつくと徐々に周囲に他の人も店を出すようになり、路地は根古屋(ねこや)路地と名付けられ、人気スポットになっていました」(風間さん)

路地の名称をもじって猫が祭られている
路地の名称をもじって猫が祭られている(写真:筆者撮影)
路地入口にある焼き菓子店
路地入口にある焼き菓子店。周辺にはこうした店が徐々に増えてきた(写真:筆者撮影)

鹿沼の銀座通りから盛り上げていく

以降、少しずつ空き家の所有者からの相談を受け、使いたい人とのマッチングなどに関わるようになり、2020年には地元の仲間たちとまちづくり会社DANNAVISIONを立ち上げた。鹿沼の中心商店街である銀座通りを中心に地域の価値を上げていこうというのだ。

鹿沼は日光東照宮造営時の貯木地として、職人たちの居住地として、日光例幣使街道(東照宮に向かう勅使が通行)の宿場町として栄えた。銀座通りはまちのメインストリートとして大店が並んでおり、歴史を感じさせるような建物も少なくない。

その銀座通りで2020年に風間さんたちが取得した物件に蔵が付いていた。通りに面して元々は呉服店だった建物があり、店舗の奥に住居、さらに奥まった場所に蔵という配置で、鹿沼ではこうした配置が多いそうだ。

呉服店
風間さんたちが宿に改装したのは銀座通り(栃木県鹿沼市)に面した元呉服店の敷地奥にあった蔵。通りから見ると蔵の存在には気づかない(写真:筆者撮影)
次ページ「泊まれる蔵」に活路を
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事