廃墟の「蔵」を「泊まれる宿」に改修→地方のまちに生まれた新しい動き。全国に点在する「蔵」、眠っている資産の生かし方

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現在、観光名所となっている栃木や川越の蔵は見世蔵(店蔵)で、大火を機に防火対策として店を防火性能の高い蔵として作ったものだ。倉庫としての蔵ではないため、通り沿いにある。そうした立地ならカフェやレストラン、店舗として使いやすいが、敷地最奥部となると話は違ってくる。

元呉服店はそもそも広い店舗だったので、分割して場所ごとに違う人に貸すつもりだったが、「蔵だけは使えないと思っていました」と風間さん。1階6坪(19.8平方メートル)、2階4坪(13.2平方メートル)ほどとコンパクトで、しかも道路に面していない。使えないと思うのも無理はない。

改修前の蔵内部の様子
改修前の蔵内部の様子(写真:DANNAVISION提供)

そんな時に「泊まれる蔵」のプロジェクトと出会った。推進するエンジョイワークスとは以前から付き合いがあり、話を聞いた途端にこれなら蔵を使えると思ったそうだ。

「下階に風呂などの水回りとリビングスペース、上階に寝室を配するというシンプルな使い方で内装も蔵の良さをそのまま生かしたもの。それほど多額の投資をしなくても非日常を感じられる、他にない宿が作れるはずだと思いました」(風間さん)

鹿沼は大谷石の産地に近く、市内では深岩石(大谷石に似た凝灰岩。大谷石より若干硬い)も採掘できるので石造りのしっかりした蔵が多い。風間さんたちが取得した蔵も東日本大震災時に外壁塗装を修理した跡はあったものの、それ以外は無傷。建物としては問題なく、道路問題については行政と協議、蔵のある側に出入り口を設けることなどで解決した。

「泊まれる蔵」開業までの道のり

開業までの間で大変だったのは蔵の中に詰まっていた品の処分。江戸時代の箱膳、着物に昔使われていたのだろうレジスター、桐たんすその他が雑然としまわれており、所有者が蔵を見て見ぬふりをして放置してしまう気持ちがいやというほど分かったという。

改修前の蔵内部の様子
改修前の蔵には、たくさんのものがそのまま放置されていた(写真:DANNAVISION提供)

「処分費用も手間も個人でやるには無理があるほどの量で、何十年も開けたことがないというのは誇張ではない。悪いことに蔵は堅牢にできているのでそうそう壊れはしません。だから逆に残ってきたのです」(風間さん)

開業は2025年7月。現状の稼働は週末が中心だが、宿も店舗などと同様に認知度とともに稼働率が上がっていくものなので数字が見えてくるのはこれからだろう。ちなみに第1号物件である葉山の稼働率は90%ほど。女性グループの利用が多いそうだ。

改修後の1階
改修後の1階。ガラス窓の向こうが浴室(写真:筆者撮影)
2階の寝室
2階の寝室。大きく手を入れることなく、蔵の雰囲気を生かしている(写真:筆者撮影)
地元産の材木を使った浴室
地元産の材木を使った浴室(写真:筆者撮影)
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