所有者がなんとかしたいと思っても動かない、動かせない不動産がある。ただ、時にはそこに善意と偶然が重なって思わぬ方向に動き始めることもある。
京都府京丹後市の廃墟がたどった道のりはそうした事例のひとつ。まちに人を呼ぶ大事な場になっているかつての“負動産”、そしてそこから生まれた空き家問題解決のための手段の物語をご紹介しよう。
大きすぎて売れない・貸せない不動産が山積み
京都府京丹後市と聞いてすぐに場所が想起できる人はそれほど多くはないだろう。インバウンドに人気の伊根の舟屋(伊根町)の隣といえばおおよそはお分かりいただけるだろうか。
細長い京都府の日本海側、丹後半島の大部分を占める地域で、公共交通機関あるいは車利用で東京からは片道6時間程度。京都からでも2~3時間はかかる場所である。
その京丹後市で築60年以上、老朽化しているうえに床面積200㎡ほどの広大なちりめん問屋の建物が売りに出ていた。敷地内には他人名義で未登記の建物・祠(ほこら)などがあり、地元の不動産会社に売却を依頼するも長年なんら反応はなかった。
理由は推察できるだろう。老朽化した広い住宅にはニーズがない。新築ですら、このエリアでの売れ筋は35坪(115㎡強)で50坪(165㎡)を超えると売れない。
ましてこの家のように60坪(200㎡弱)以上はまず無理。賃貸住宅としても借り手がいるとは思えず、解体となれば数百万円はかかるだろう。地方の空き家にはこうした例が多く、大きな建物ほど動かず、お荷物になりがちだ。
この不動産を相続、所有していることで所有者は行政の支援が利用できずにおり、生活を立て直すためにはどうしても家を手放さなくてはならない。だが、売却はもちろん、タダでも引き取ってもらえそうにない、そんな状況だったのだ。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら