時間のパッチワーク「継ぎはぎの廃墟」の引力。地域全体が不思議空間、否応なく見せつけられる「廃墟×アート」の可能性《大阪・北加賀屋》

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改修前の千鳥文化
改装前の千鳥文化。一見する限り、「残す」判断をするのが難しいように思われるが……(写真:千島土地提供)
水都・大阪の南西部、木津川の河口付近に北加賀屋(住之江区)という地域がある。前記事に引き続き、造船所撤退後、空洞化していた地域がアートによって独自の進化を遂げている様子を紹介する。
【前記事】「意味不明すぎ」紙やすりの壁紙に"やすられる"部屋、コンセント430個が並ぶ部屋…。アーティストが廃墟・空き地を変えた《大阪・北加賀屋》

"継ぎはぎ"の文化住宅

前記事で取り上げたAPartMENTが改装された翌年、一部がオープンした複合施設「千鳥文化」もインパクトのある建物だ。

同施設は角地に建つL字型の建物で、おそらくは1棟ずつ建てられたのだろうが、地元で働いていた船大工などの手で増改築が繰り返され、現在の姿になったと推察される。そのせいだろうか、窓の位置や壁の材料などはそれぞれ異なり、改修された今もどこか"継ぎはぎ感"がある。

2014年以来空き家になっており、改装前の写真を見ると普通なら「壊す」判断をしそうな状態。ところが、千島土地は「残す」判断をした。

2004年以降、造船所跡地が「クリエイティブセンター大阪」になるなど北加賀屋には複数のクリエイティブ拠点ができてきていたが、そうした施設がオープンするのは主にイベント時。

それ以外の時に地域を訪れた人にも楽しんでもらえたり、アーティスト、クリエイターや地域住民が交流できる施設を作ろうという意図である。

そのため、千鳥文化では安心して訪れてもらえるよう、建物の部材をすべて実測、補強して使えるだろう部材をできるだけ活かして改修を行った。結果、建物内部も新しい材と古い材が入り交じる継ぎはぎ感満載の空間となっている。

【写真】「見るだけで面白い」、かつての千鳥文化を伝える古い写真や現在の姿、そのほかに見つけた北加賀屋の面白いスポットなど(39枚)
次ページ改築後も「継ぎはぎだらけ」
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