「おじさんが、放尿している……!」
東京で暮らし始めて数日経ったある日、駅チカの公園で60~70代くらいの男性が放尿をしているところに遭遇した。「公衆トイレに間に合わなかったのかな?」と一瞬思ったが、羞恥心などは感じられず、むしろ背筋をピンと伸ばした、堂々とした姿でおじさんは放尿をしていた。
しかも、その側では妻と思しき女性が杖を振り回して周囲を威嚇。どうやら、夫の放尿姿を見られないように……と思っての行動らしい。
「それなら公衆トイレに行けよ!」
などと内心思いながらも唖然として固まる筆者をよそに、通り過ぎる人はそれほど驚いた顔をせず、というか一瞥もくれずに去っていった。
「これが、東京なのか……」
田舎者の筆者は、そう思った。そして程なくして知った。公共の場で放尿をするおじさんがいる街は、東京を探してもそこまで多くはないことにーー。
離島から上京、選んだ街は東武東上線沿線の「上板橋」
筆者は生まれてから18歳まで瀬戸内海に浮かぶ離島で育ち、大学進学のため上京した。
あまりの田舎コンプレックスを拗らせ、高校の卒業式の翌日に小さなスーツケースとリュックだけを持って新幹線に飛び乗った。だが、たかだか18の田舎者にはひとり暮らしの右も左もわからず、新幹線の中で急きょ電気の開栓電話をしたほど行き当たりばったりな上京だった。


















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