「公共の場でおじさんが放尿」「妻は横で杖を振り回す」…田舎出身の18歳女性が「家賃の安さ」だけで選んだ街で見た光景と、そこで得た青春の日々

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上板橋
東武東上線上板橋駅北口側の風景。駅前にはチェーン店が多く、食事場所には困らない(筆者撮影)
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進学、就職、結婚……人は様々な理由で東京に移り住む。しかしずっと同じ街に暮らすとは限らず、一度引っ越すと、その街に何年も足を運ばないケースも――本連載ではそんな「東京で最初に住んだ街」を、様々な書き手が久しぶりに歩き、想い出の中の街と現在の街を比べていきます。
連載第3回は、コラムニストの筆者が、上板橋で過ごした日々を振り返ります。

「おじさんが、放尿している……!」

東京で暮らし始めて数日経ったある日、駅チカの公園で60~70代くらいの男性が放尿をしているところに遭遇した。「公衆トイレに間に合わなかったのかな?」と一瞬思ったが、羞恥心などは感じられず、むしろ背筋をピンと伸ばした、堂々とした姿でおじさんは放尿をしていた。

しかも、その側では妻と思しき女性が杖を振り回して周囲を威嚇。どうやら、夫の放尿姿を見られないように……と思っての行動らしい。

「それなら公衆トイレに行けよ!」

などと内心思いながらも唖然として固まる筆者をよそに、通り過ぎる人はそれほど驚いた顔をせず、というか一瞥もくれずに去っていった。

「これが、東京なのか……」

田舎者の筆者は、そう思った。そして程なくして知った。公共の場で放尿をするおじさんがいる街は、東京を探してもそこまで多くはないことにーー。

離島から上京、選んだ街は東武東上線沿線の「上板橋」

筆者は生まれてから18歳まで瀬戸内海に浮かぶ離島で育ち、大学進学のため上京した。

あまりの田舎コンプレックスを拗らせ、高校の卒業式の翌日に小さなスーツケースとリュックだけを持って新幹線に飛び乗った。だが、たかだか18の田舎者にはひとり暮らしの右も左もわからず、新幹線の中で急きょ電気の開栓電話をしたほど行き当たりばったりな上京だった。

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