田舎者ゆえに、あまりにも土地勘が無かった筆者。選んだのは東武東上線沿線の「上板橋」だった。新居の決め手は圧倒的な「家賃の安さ」だった。駅徒歩3分(信号が青なら早足で1分で着く)、1階1K4.5畳ロフト付き(ロフトに布団は敷けない)で家賃は2万円という破格さだったのだ。
さすがにここまで安かったのは「上板橋の家賃相場が安いから」ではなく「事故物件だったから」なのだが(上板橋の家賃相場は安めだが)、霊感がまったくないので霊によるトラブルには見舞われなかった。泊まりに来た友だちがよく金縛りには遭っていたが、筆者は家の隙間から入り込んでくるアリの大群以外のトラブルなく4年暮らすことができた。
田舎者でも住みやすい、上板橋という街
家賃の安さはもちろん、田舎者にとって大都会でキラキラしたイメージのある池袋まで1本で行けることを魅力に感じた上板橋。駅の周りにはモスバーガーやケンタッキーなどのチェーン店が豊富で、非常に暮らしやすい環境が整っている。
板橋区内には小学校や中学校などの教育機関が多いので、必然的に病院や美容院が多いのもポイントが高い。さらに、5分も歩けば違う公園にぶつかるほど公園が豊富で、都内なのに気軽に緑が見られるのも田舎者にはうれしい。板橋という区は基本的に住宅街なので、繁華街のような煩雑さがないのも住みやすさにつながっているのだろう。
さすが都内というだけあり、上板橋駅を離れてもスーパーもコンビニも多い。なかでも、特に生活で助けられたのはドラッグストアの存在だ。当時は北口にも南口にもあったトモズは便利だったし、北口のマツキヨは圧倒的に卵が安かったのだ。貧乏学生だった筆者は、何度マツキヨの激安卵に命を救われたかわからない。
こうした住環境に恵まれたおかげで、最寄りのコンビニまで徒歩1時間30分ほどかかる本物の田舎者が突然暮らしはじめても、生活に困ることはほとんどなかった。
数少ない困ったことをあげるなら……上板橋周辺に住んだことがある人ならあるあるだが、宗教勧誘の多さだけは面倒だった。公園で放尿をしているおじさんは放尿をしているだけなので直接的な迷惑をかけてこないが(もちろん不快ではあるのだが)、宗教勧誘はしつこく話しかけてくるし、なんなら家まで押しかけてくる。
とは言え、それでも上板橋は住むには最高の街だった。公園で放尿するおじさんを目撃するからと言って治安が悪いわけではなく、実際に警視庁のデータを見ても犯罪発生率は低めだ。


















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