「公共の場でおじさんが放尿」「妻は横で杖を振り回す」…田舎出身の18歳女性が「家賃の安さ」だけで選んだ街で見た光景と、そこで得た青春の日々

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そんな上板橋での過ごし方は、もっぱらお金がかからないゲームをプレイすることだった。そう、なけなしのお金をベルクの特売(1kg1000円の牛肉)に残しておくため、深夜の公園に繰り出してはひたすらポケモンGOをしていたのだ。

当時の筆者は「運」を良くするのに必死だった。少しでも徳を積めば、ラプラスやミニリュウなどの珍しいポケモンをゲットできるはずだと信じていたのだ。結局、一度も効果を実感することは無かったが、毎晩のように公園までの道のゴミを拾いながら歩いていた。

夜な夜なタバコの吸い殻を拾いながら必死の形相でスマホを見つめ、不思議な指の動きをしては一喜一憂していた女はどう見ても不審者だっただろう。だが、先程から綴っているように、上板橋という街には、日中の公園で平気で放尿をするおじさんやおじいさんもいた。

だから、多少様子がおかしいくらいの若者なら、容易に受け入れてくれる寛容さがある。べつになにも「不審者に優しい」と言いたいわけではない。あらゆる人にとって、上板橋は寛容な街なのではないかと言いたいのだ。

進学した大学へは45分の通学…なぜ遠くに住んだ?

ところで筆者が進学した大学は、新宿区にある「目白大学」だ。心理学を勉強するため、人間学部心理カウンセリング学科(現:心理学部心理カウンセリング学科)へ入学した。

ひと口に新宿区といっても、大都会を象徴するようなエリアだけではない。目白大学の新宿キャンパスも同様で、最寄り駅である中井駅から川沿いを進み、「全力坂」に登場するほど急な坂を登った先に大学があった。

そこには新宿区らしい煩雑さはなく、通学中に田舎特有のフクロウのような鳩の鳴き声が聞こえたほどだ。緑豊かで静かな街並みは、高校の学年主任に「海人(うみんちゅ)」と呼ばれていたほどの田舎者すら受け入れてくれた。

……と、ここまで書いたところで、東京の地理に詳しい人は「あれ、遠くね?」と思ったかもしれない。目白大学までの通学は、東武東上線で池袋に出て、池袋から山手線で高田馬場に出て、高田馬場から西武新宿線で中井にアクセスする乗り換え2回のパワフルスタイル。なんと、東京都内に住んでいるにもかかわらず、大学までの所要時間は約45分だった。

どう考えても落合や中野エリアに住んだほうが良いと思うだろう。だが、本物の有人離島出身の筆者にとって、陸路オンリーかつ1時間未満で学校に到着するのは「あまりにもアクセス性が良かった」のだ。

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