映画『国宝』のモデル? 作家・真山仁が語る「坂東玉三郎」という深淵。出会いは突然の「指名」、玉三郎からの食事の誘いを断ったことも…

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真山 仁(まやま・じん)/1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。新聞記者、フリーライターを経て、2004年に企業買収の壮絶な舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー。07年『ハゲタカ』『ハゲタカ2』を原作としたNHK土曜ドラマが大きな話題を呼んだ。著書多数(撮影:ヒダキトモコ)
『ハゲタカ』シリーズで知られる社会派小説の雄・真山仁。企業買収の修羅場や原発、地熱発電、宇宙開発、政治の世界など、現代社会の硬質なテーマを鋭く抉り出してきた彼が、30年以上にわたって深い交流を続けてきた人物がいる。 歌舞伎界の至宝、坂東玉三郎である。
一見、接点がなさそうな「硬派な小説家」と「稀代の女形」。2人の対話と交流を綴った新刊『玉三郎の「風を得て」』を上梓した真山氏に、前編では知られざる「坂東玉三郎の素顔」を、そして後編では世間で話題の映画『国宝』についても聞いた(前後編の前編)。

後編:坂東玉三郎がこの30年、真山仁に語ってきたこと
『玉三郎の「風を得て」』(真山 仁 著/文藝春秋/1760円/184ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──お二人の出会いから教えていただけますか?

私が新聞記者からフリーになって1年目ぐらい。エンタメ系のインタビュー仕事が少しずつ入り始めた頃で、最初のきっかけは映画監督のアンジェイ・ワイダへのインタビューでした。

ワイダの話を少し先にすると、彼はドストエフスキーの『白痴』を舞台化しようとした際に、主役のナスターシャとムイシュキン公爵を1人で演じられる役者を世界中で探したそうです。メリル・ストリープをはじめ、いろんな女優に会ったけれど何かが違うと。

そんな中、京都の南座で玉三郎さんの『椿姫』を見た。「これだっ!」と衝撃を受けて、いきなり楽屋に押しかけて自己紹介し、「僕の舞台に出てほしい」と直談判した。それで玉三郎さんがナスターシャを演じることになった。

その大阪公演のプロモーションでワイダが来日した際、取材を担当しました。気難しい巨匠と聞いていましたが、なぜかとても楽しげで。終わった時、「いい質問で楽しかった」と褒めていただきました。その場に、ワイダのアテンド役として玉三郎さんのマネージャーが同席していたんです。

ある日、神戸にいる時に連絡があって、「今から愛知県の犬山に行けませんか?」と言うんです。明治村にある呉羽座という古い芝居小屋で玉三郎さんが舞踊公演をやっているから、終演後にインタビューしてほしいと。

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