年収500万の公務員が「貧困取材」を受ける事情 生きづらさは「日本特有の人間関係」にある?

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シンイチさんは、女性の障害のことは知らなかったと釈明したが、上司たちには言い訳をしていると映ったのだろう。追及はヒートアップしていく。

「いい年こいたおっさんが知らないはずないだろう」「規律性も、協調性もない。お前なんてどこにいっても通用しないぞ」

さすがに言葉が過ぎるのでは――。私が言うと、シンイチさんは「これまでの職場でもさんざんやらかしてきたので……」とうつむいた。

産業医に発達障害の可能性を示唆された

過去の問題まで根に持ち、人格を否定するような上司の糾弾はパワハラといわれても仕方ない。一方でシンイチさんが女性を傷つけたことも間違いない。シンイチさんはパワハラの被害者であると同時に加害者でもあった。

「『視覚障害=全盲』という私の無知もありました。でも、上司の鬼のような形相を思い出すと今でも恐ろしいです」

人間関係のトラブルに見舞われることの多い自分には何か問題があるのではないか――。そういえば以前、職場の産業医からも「一方的に話をする」と指摘された。同僚へのパワハラ問題を受け、あらためて産業医に相談したところ、発達障害の可能性を示唆された。早速専門の医療機関を受診、発達障害と診断されたのが数年前のことだという。

「さんざんやらかしてきた」というシンイチさんの半生はどのようなものだったのか。

子ども時代の通知表は、成績はともかく教師による所見は「落ち着きがありません」「ケアレスミスが目立ちます」「友達とうまく遊べません」などさんざんだった。シンイチさんは「たしかに、アザのある子に向かって『変なアザ』などと、思ったことを考えなしに口にするところがありました」と反省を込めて語る。

大学時代のアルバイトも人間関係で苦労した。更衣室で「あいつのせいで空気が悪くなる」と自分の悪口を言っていた相手を直接問い詰めたり、塾講師では「小太りで黒縁眼鏡」という当時の外見を生徒たちから執拗に揶揄されたりして、いずれも長く続かなかった。一方で服装や締め切りに関する指示を忘れて、失敗したこともあったという。

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