年収500万の公務員が「貧困取材」を受ける事情 生きづらさは「日本特有の人間関係」にある?

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こうした経験から、日本で就職することに不安を覚えたシンイチさん。大学で親しくなった友人が在日韓国人で、大学院では言語学を専攻していたため、修了後は思い切って韓国の大学で日本語を教えることにした。

現地での年収は300万円ほどだったが、20年以上前の当時は物価も家賃も安かった。学生や同僚との関係も良好で、仕事は楽しかったという。唯一の難点は1年契約の非常勤講師だったこと。30代半ばを過ぎ、安定した仕事に就こうと公務員の採用試験を受けた。

地方自治体に転職したのは約10年前。ここから本格的な「やらかし」が始まる。

「習うより慣れろ」の新人教育

シンイチさんによると、まず「習うより慣れろ」という公務職場の新人教育の方法になじめなかった。マニュアルを読んでも理解できない点やパソコン操作や書類作成の手順の根拠を尋ねると「とりあえずやって」と返される。明確な答えがないと不安になるというシンイチさんがなおも質問を重ねると「つべこべ言わずにやれ」と煙たがられるようになった。

早々に「めんどくさい人」とのレッテルが貼られる中、友人の結婚式に出席するために有給休暇を申請したところ、上司から「今は仕事に集中するべきだ」と阻まれた。直接言われたわけではないが「仕事もできないくせに生意気だ」という本音を感じたという。

一方で口頭での指示を理解することが苦手で、早合点しがちだったシンイチさんにはケアレスミスも目立った。しかし、質問をしても答えてもらえないという不満がたまっているため、問題を指摘されても「ちゃんと教えてもらっていません」などと“反論”してしまう。周囲には「『ミスを他人の責任にしている』と映ったと思います」と振り返る。

書類の内容を確認しながらデータをパソコンに入力、同時に市民からの電話にも対応するマルチタスクを求められる部署では、ミスの頻度が上がった。上司に「書類に集中させてほしい」と掛け合ったが、「(同時に)やってもらわないと困る」と突き放された。

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