自分だけが嫌われているといった疎外感
喫茶店で待っていると、ケンイチさん(仮名、47歳)が約束の時間ぴったりに現れた。手渡された名刺の肩書は合同会社社長。連日の殺人的な暑さについての愚痴をこぼし合いながら席に着く。すぐに「私はここのリッチブレンドが好きなんですよ」と微笑みながらメニューを広げてくれた。
ケンイチさんにはアスペルガー症候群(現在の自閉スペクトラム症)の特性がある。事前に「コミュニケーションの問題を改善したいので、不協和音を感じたら指摘してほしい」と言われていた。しかし、会話のキャッチボールは心地よい。ただひとつだけ、視線が少し強いように感じた。一般的に同症候群の人は他人と目を合わせるのが苦手だとされる。
私が「もしかして私の目を見て話すよう努力してくれてますか?」と尋ねると、ケンイチさんは一瞬驚いた後、苦笑いした。「めっちゃしてます。やっぱりわかるものですか?」。
物心ついたときから家族や友人と一緒にいても、自分は普通とは違う、浮いている、自分だけが嫌われているといった疎外感があった。ケンイチさんの体験に耳を傾けてみよう。
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