業界騒然「豆腐バー」異例のヒットになった道筋 創業52年のメーカーが新基軸を開発できた理由

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海外に工場を建てる方法もあるが、池田社長は「私は、日本で生産する豆腐が一番おいしいと思っています。韓国や中国、アメリカも、日本と同じくアメリカの大豆を使いますし、製造機械はどの国でも日本製がほとんど。違うのは水なんです。日本の水はミネラル分が少ない軟水で、豆腐製造に適している。ですから、日本で製造し輸出したい」と熱く語る。

もう1つ、日本における環境変化もあるだろう。「毎日手作り料理」は理想かもしれないが、現実には多忙な人が増え、そうした食生活が適わない人は多いほか、求めていない人もいる。その点、加工食品は多忙な人や料理に自信がない人が手軽に食卓に出せる。しかも大豆製品はカロリーが低く食べやすい。

従来の豆腐も必要だが、こうした新しい食文化を作り出していくことも必要だ。何より中世から食べ継がれてきた豆腐が、今後も日本で生き残るために進化は欠かせなかった。

「進化系豆腐」で利益率を改善

アサヒコは豆腐バーのほかにも、豆腐を肉そぼろなど“肉化”したり、プリンなど“デザート化”するなどして、豆腐の可能性を探り続けている。豆腐バーヒット以来、生産量拡大に対応するため製造ラインの拡充を進めており、目下豆腐バーの生産ラインは4本に。豆腐バーを含む進化系豆腐の売り上げは全体の2割を占めるほどに成長している。

豆腐で作った豆腐ミートを使った生姜焼きや焼肉、ガパオなどもある(撮影:今井 康一)

豆腐バーのグラム単価は豆腐の約9倍に上る。最近物価は上昇傾向にあるとはいえ、いきなり豆腐の価格を2倍3倍に引き上げることは難しい。こうした中、池田社長は豆腐バーのように利益率が高い新商品を出し、会社の体質改善を図ってきた。

豆腐で作った「杏仁豆腐」と「プリン」(撮影:今井 康一)

その中で発見した、豆腐を植物性タンパク源と見なす発想は、未来へつながる新しい商品群の開発につながっている。ピンチはチャンスとはよく言われるが、まさに池田社長率いるアサヒコの挑戦は、豆腐の未来を切り開くことにつながったのである。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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