SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響

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民放各局が運営するTVerはリアルタイム配信が可能ではあるが、見逃し配信用であることがプロモーションでは強く打ち出されており、災害時に見るべきサイトと認識されていない。ラジオは災害時に有力な媒体であるが、ラジコはインターネットが断絶すると届かなくなる。民放連は能登半島地震でラジオ受信機を被災地に配布しているが、ラジオ受信機は停電時にも電池があれば長時間使える。地域の公共施設や学校も含めて配布を拡大していきたい。

正確なニュースを広く伝えるために

通信事業者との連携も検討したい。災害時にインターネットが利用できるように対応しても、不確実な情報が流通するのでは意味がない。日本国内ではヤフーやLINEが多くの接点を持つ。災害発生から1週間は信頼できるニュースを優先して扱うようプラットフォーム運営企業にガバナンスを求めることを検討したい。その際には偽・誤情報対策を名目に権力に都合が良いメディア規制が行われないように注意するべきだ。

インターネットで「バズる」「いいね」を増やそうとするテレビ局もあるが、それではインプ稼ぎと変わらない。正確なニュースを広く伝えることは災害時の命綱であり、偽・誤情報の対策となりうる。そのための取り組みが求められている。

藤代 裕之 法政大学社会学部教授

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ふじしろ ひろゆき / Hiroyuki Fujishiro

広島大学文学部哲学科卒業、立教大学21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。徳島新聞で社会部や文化部の記者、NTTレゾナントでニュース編集やR&Dを担当し、法政大学社会学部メディア社会学科准教授、2020年から現職。編著書に『フェイクニュースの生態系』(青弓社)や『ネットメディア覇権戦争偽ニュースはなぜ生まれたか』(光文社)などがある。

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