SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響

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ほかにもGoogleの安否確認サービスやAmazonの仕組みを利用した物資支援が行われ、テレビとの関係では動画配信サービスを利用してニュースを同時配信するという画期的な取り組みもあった。

これらの動きを受けて、総務省は2012年に「大規模災害時におけるインターネットの有効活用事例集」を取りまとめた。自治体や省庁がアカウントを開設するだけでなく、ソーシャルメディアを運営する企業側も積極的に取り組みを行い、ツイッターは救助要請ツイート「#(ハッシュタグ)救助」のルール周知、消防庁や気象庁との意見交換や自治体との防災訓練実施で連携を深めた。

大規模な災害時に役に立ったという人々の記憶、行政の後押し、企業の努力、これらが重なりソーシャルメディアは災害時の情報インフラとして社会的に位置づけられたといえる。

災害時に携帯電話やインターネットが利用できるように通信インフラの強化も進められた。東日本大震災では沿岸部を中心に、携帯電話基地局の流出や水没、ケーブル切断により通信インフラが大きな被害を受けた。そこで、通信事業者により基地局のバッテリー強化、基地局車や電源車の配備が進められた。

これらの対策が功を奏し、2016年の熊本地震では通信インフラの被害が最小限に抑えられ、被災地からの情報発信を支えたと評価が高まった。しかし、今回の能登半島地震ではソーシャルメディアが情報インフラであるとの認識を捨てざるを得ない状況がはっきりした。

メディアは報じ方を変えよ

地震や台風などの災害時にはソーシャルメディアの投稿がテレビで使われる光景は当たり前となっているが、能登半島地震では状況が違った。発災直後の現地映像は少なく、取材が被災地に入るとようやくスマートフォンで撮影した映像により津波被害が明らかになっていった。その理由は発信を支える通信インフラの甚大な被害と、高齢者が多いという地域特性にある。

インターネットが利用できず、ソーシャルメディアに投稿される被災地の情報は乏しくなる。そこを埋めたのは「インプ稼ぎ」による不確実性の高い投稿だ。インプ(インプレッション)稼ぎとは収益を得ることを目的にXの投稿に閲覧や反応を得る行為で、能登半島地震では東日本大震災の津波動画が投稿されたり、偽の救助要請が投稿されたりした。

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