SNSが災害時の情報インフラとして使えない理由 偽情報すら収益化する姿勢で被災地の活動に悪影響
対策は表現の自由への配慮があり自主規制が基本となるが、そもそもプラットフォームを運営する企業のほとんどが外資系であり実効性は乏しい。偽・誤情報対策を放棄し、陰謀論に同調することもあるエキセントリックな起業家であるイーロン・マスクが話を聞くなら苦労はない。イーロン・マスクの動きを横目にフェイスブックやGoogleの対策も後退している。
リテラシーはどうか。災害の混乱に乗じてお金を儲ける行為は問題だが、法的に規制されているわけでもなく、運営企業からペナルティを課せられるわけでもなく、外国からの投稿者にモラルの問題と言ったところで通じる可能性が低い。現実問題としてインプ稼ぎを減らす方法はない。家族や知人を心配したり、善意で情報を提供したりする人たちも投稿が増える要因だが、その人たちをリテラシー不足として批判するのも酷だ。
2022年の台風15号ではドローンで撮影された静岡県の被害状況として、生成AIで作られた偽画像がXに投稿されて拡散した。生成AIの登場により真偽の見きわめはさらに困難になっている。生成AIでは動画も作れるようになり技術の進化はとどまるところがないが、人が備えるリテラシーには限界がある。
災害時の情報をソーシャルメディアに頼ってきた取材方法も変更が求められている。カメラ機能がついたスマートフォンを持つ人は、既存メディアの支局や記者、カメラの数より圧倒的に多く、それらを簡単でコストが安い取材網として活用してきた。
ただ、災害時は既存メディアも混乱しており、誤報が繰り返されている。筆者は以前からソーシャルメディア投稿の安易な報道利用についてリスクが高いことを指摘してきた。不確実性の高い投稿には、陰謀論や他国や組織による影響工作も入り交じるため、リスクはさらに増している。
プラットフォーム運営企業の姿勢は大きく変わり、偽・誤情報すら収益にしようとしているが、テレビや新聞は誤報により社会的な信頼が低下すれば失うものが大きい。既存メディアは、ソーシャルメディアを玉石混交ではなく、「便所の落書き」だと捉え直し、情報インフラという前提を疑い、新たな対策を検討する必要がある。
トリアージによって必要な情報を収集する
信頼できる情報をどのように収集するのか。収益が細る既存メディアが取材網を拡大し、記者やカメラを増やすことは現実的ではない。
一つめは、系列や社、さらには媒体を超えて災害時の現場取材対応チームを作ることだ。能登半島地震ではNTTとKDDIという巨大企業による協力が協定に基づいて行われ、NTTグループの海底ケーブル敷設船にKDDIが衛星アンテナを利用した携帯電話の船上基地局を展開した。
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