南海トラフ地震「臨時情報」のお粗末な科学的根拠 責任が及ばないよう対策は自治体や企業に丸投げ

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初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された2024年8月は南海トラフ地震への注目が再び高まった(写真:ピッチジャーク/PIXTA)
官製情報、学会の公表値などが常に事実であるとは限らない。地震予知をめぐる政府、自治体、学会の内幕を、綿密な調査報道によって喝破した『南海トラフ地震の真実』の著者である小沢慧一氏に、地震予知・防災報道が留意すべき点、あるべき姿勢を示してもらった。

宮崎県を襲った震度6弱の地震を受け、初めて南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表された2024年8月は南海トラフ地震への注目が再び高まった。南海トラフ地震には国をあげて備え、将来の被害を少しでも軽減する努力が必要だ。一方で、巨大地震対策という大規模政策の裏には政治的思惑も潜む。マスメディアとして監視する姿勢を忘れてはいけない。

「水増しされた」発生確率

『GALAC』2025年2月号の特集は「阪神30年、能登1年 災害報道アップデート」。本記事は同特集からの転載です(上の雑誌表紙画像をクリックするとブックウォーカーのページにジャンプします)

「南海トラフ地震の確率はえこひいきされ、水増しされている」──。防災担当だった私は、名古屋大学の鷺谷威教授(地殻変動学)から南海トラフ地震の「30年以内に70~80%」という発生確率は水増しされているという「タレコミ」を受けた。「どういうこと?」と私は驚き、当時の議事録や関係者に当たった。

調べてみると、南海トラフ地震だけ全国各地の地震発生確率を算出する計算式(単純平均モデル)とは違う特別な計算式(時間予測モデル)を使っていることがわかった。

全国基準の計算式を使うと20%程度だが、時間予測モデルでは70~80%と高い確率が出る。時間予測モデルがより正確な確率を出せる計算式ならば問題ない。

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