各話ごと振り返る「不適切にも」の凄いポイント 最終回はルールを壊して未来を変えられるか

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ただ、彼らのドラマで育った視聴者というのは、サブカル愛好層、あるいはマイルドヤンキー層とほぼ限定されていて、決して幅広い層に受けているわけではない。社会学者・向坂サカエ(吉田羊)のようなタイプは眉を顰めていたことだろう。

まあ全方向に受ける作品など、なかなかないし、2000年代、2010年代において、テレビにこの層を引きつけた功労者であったのは紛れもない事実である。だからこそ、NHKの朝ドラや大河の脚本を任されたのだろう。

不安を感じる今だからこそ尊い青春

そして今回は、いつもの宮藤官九郎ファンにプラスして、「不適切」と「コンプライアンス」によって、人口が多く、消費も旺盛な世代で、かつ、最近の急激な時代の変化を生きづらく感じている層全般に『不適切にもほどがある!』は格好の癒やしとなった。さらに、未来に不安な人たちにも。

今、世界の未来には不安しかない。1986年からしばらくして一瞬のバブルがあったあとは、日本経済が失速し、失われた30年(40年?)がやってくる。天変地異に戦争と、明るい話題がまるでない。

何がいけなかったのか、昔はよかった、あるいはどこかでやり直せたら違っていたのではないか、と思う世代の切なく、それでも、絶え間ない笑いと、純子というみんなの娘の象徴のような、一点の曇りのない純度の高さに救われる。市郎を通して、絶対に守りたい大切なもの――誰にでもある17歳の頃に、青春に捧げる物語だ。

終盤、うるさがたのサカエが、息子キヨシの担任で、昭和で出会った、顔はいいのに内面がイマイチな、安森(中島歩)に抗えずどんどん惹かれていく。歴史を変えてはいけないのに、感情に抗えない。

頭でっかちな人間が理性を壊され本能が剥き出されていく。彼女のように、このドラマはタイムパラドックスのルールなんてぶち壊して、未来を変えてほしい。

最終回は、1988年から1993年にかけて活躍し(2022年に限定復活した)元男闘呼組の成田昭次がゲスト出演すると発表されている。彼が演じるのは昭和の人か、令和の人か、キーマンになるのか、伏線回収があるのか、まっさらな気持ちでテレビに向かうことができて本当にうれしい。まあゲスト発表時点で完全にまっさらではないのだが。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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