英国の統計「移民約50万人の見落とし」ヤバい背景 データは信頼できる?EUから離脱を問う火種に
政府統計や人口調査と聞けば、私たちはつい「信頼できるもの」だと思い込んでしまう。しかし、その内実は驚くほどのドタバタ劇に満ちている。イギリスでは2011年の国勢調査で、約50万人の移民が見落とされていたという驚愕の事実が判明した。その衝撃は、「人の自由な移動を認めるEUからイギリスは離脱すべきだ」という世論に火をつけ、2016年のブレグジットの国民投票へと繋がっていった。いったいなぜ、「入国してくる移民を丸ごと見落としてしまう」というような、あまりにもお粗末な事態が生じることになってしまったのだろうか。統計学者のジョージナ・スタージ氏が上梓した『ヤバい統計』から一部を抜粋して紹介する。
移民たちが丸ごと見落とされていた
「英国の人口が推測よりも50万人以上多い」という、2011年の国勢調査前の10年間で生じたずれでは、いくつかの移入民の集団が、丸ごとすっかり見落とされていた。
この事態を説明するには、2003年秋のハンガリーに時間を戻さなければならない。
ビジネスマンのヨージェフ・ヴァーラディは、自身の運を好転させなければならなかった。というのも、彼は不振にあえぐマレーヴ・ハンガリー航空のCEOを辞職したばかりだったのだ。
新規のビジネスに挑戦したかったヴァーラディは、余計なサービスを省いた格安航空会社「ウィズエアー」を共同で創業した。このビジネスモデルの有効性は、英国のイージージェットやアイルランドのライアンエアーといった同業他社によって実証ずみだった。要は、旅はしたいが、余計なサービスのために大金を払いたくない人が大勢いるということだ。
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